80年代、音楽の情報源はFMと雑誌だった。
今の50歳代が青春時代を過ごした1980年代。時代はまさにバブル経済にむかって景気が上向いていったときでした。時代を映す音楽も量産されヒットチャートを賑わせていました。
当時はJ-POPという呼び方はなく、邦楽・洋楽のざっくり二分にされていました。もちろんインターネットなどない時代ですから、新譜の情報やミュージシャンの情報の入手経路はなんといってもFMラジオと雑誌でした。FMはエアチェック(カセットに録音すること)が目的。新聞のテレビ欄の横にFMの番組欄があって、その日にオンエアされる曲を細かくチェックしていました。フルコーラス流れて1曲まるごと録音できたらラッキー。1コーラスでフェードアウトしたり、イントロとDJの曲紹介がかぶった日には、とっても残念な気分でラジカセの一時停止ボタンを押し続けたものでした。一方音楽情報満載の雑誌は毎月発売日が楽しみでした。現在も発行され続けている雑誌もありますが、当時のバイブル的雑誌を紹介します。
▲ロッキング・オン
言わずとしれた渋谷陽一さん発行のロック雑誌。
海外アーティスト情報はほぼロッキング・オンから。
中程のページのモノクロのアーティスト写真は切り抜いて下敷きに入れていました。
▲レコード・コレクターズ
音楽評論家の中村とうようさんが発刊した音楽雑誌。
毎月テーマを深掘りする編集内容でとても勉強になりました。
みんな同じ曲を聴いて育ちました。
いまは音楽ジャンルは細分化され、人によって聴く音楽はバラバラです。しかし80年代は音楽はテレビ・ラジオ・レコード、そしてお店で聴く有線放送など情報源が限られていたので、みんなが同じアーティストの楽曲を聞いていました。良く言えば大人も子どもも同じ曲を共有していました。テレビでは「ザ・ベストテン」「夜のヒットスタジオ」「ザ・トップテン」など、番組名だけでも懐かしくて涙がでそうです。
80年代を代表する日本のアーティストといえば(挙げればきりがありませんが)この人!といえる各年の有線年間リクエストチャート1位をご紹介します。
●有線年間リクエストチャート(1980年-1989年)
-
1980(昭和55年)
「ダンシング・オールナイト」
もんた&ブラザーズ1980年の有線放送リクエストとオリコンの第一位を獲得したもんた&ブラザーズのデビューシングルです。当時は新鮮だったハスキーボイスで、この年の紅白歌合戦にも出場しました。
-
1981(昭和56年)
「奥飛騨慕情」竜 鉄也奥飛騨慕情は竜鉄也の演歌歌手としてのデビューシングルです。1980年に発売され有線放送で徐々に人気が上昇し、1981年の日本有線大賞に輝きました。
-
1982(昭和57年)
「3年目の浮気」ヒロシ&キーボーあの頃は大人も子どももそろって「バカ言ってんじゃないよぉ〜」と口ぐさんでいました。ヒロシ&キーボーの二人の本名は黒沢博と山田 喜代子というのを知る人は少ないはず。
-
1983(昭和58年)
「浪花恋しぐれ」都 はるみ・岡 千秋♪芸のためなら女房も泣かす〜♪の歌い出し。今の時代では賛否両論ありそうな歌詞ですが、当時は何の違和感も無く聞いていました。今夜は浪花恋しぐれ聞きながら「酒だ酒だ 酒買うてこい!」と心の中で叫んでみます。
-
1984(昭和59年)
「つぐない」テレサ・テン台湾出身のスター、テレサ・テンは「アジアの歌姫」の異名もあるほど広い人気を博しました。この曲は荒木とよひさ作詞・三木たかし作曲の荒木・三木コンビによる代表作です。
-
1985(昭和60年)
「愛人」テレサ・テン有線放送リクエストで14週連続第一位を記録したこの歌は、この年の紅白歌合戦には楊貴妃を彷彿させるコスチュームで歌い上げられました。
-
1986(昭和61年)
「時の流れに身をまかせ」テレサ・テンつぐない、愛人に続く16曲目のシングル「時の流れに身をまかせ」で日本有線大賞三連覇を達成しました。今もカラオケで親しまれるこの歌詞には、時代が変わっても変わらない愛の言葉が綴られています。
-
1987(昭和62年)
「命くれない」瀬川瑛子1986年の発売当初は鳴かず飛ばずの売れ行きでしたが有線放送から火がついて、累計170万枚の大ヒットを記録。この年の紅白歌合戦にも出場し熱唱しました。
-
1988(昭和63年)
「抱きしめてTONIGHT」田原俊彦トシちゃんの代表曲といってもいいこの歌は、いまも50代にとってはカラオケの定番ソングです。人気ドラマ「教師びんびん物語」の主題歌でもありました。
-
1989(平成元年)
「シングル・アゲイン」竹内まりやこの曲は中森明菜、徳永英明、JUJUなど多くのアーティストにカバーされるほどの名曲です。テレビに出演しないことで有名なアーティストなので歌う姿をライブ以外で目にした人はあまりいないのではないでしょうか。
有線放送にリクエストして、かかるまでのワクワク感。
ラジオ番組にリクエストはがきを送った方もいるはずですが、葉書の投函から番組放送までの長い待ち時間、さらにDJに選ばれるかどうかわからないリスクに比べ、気軽で確実に好きな音楽が聴ける有線放送リクエストをした人も多いのでは。学校帰りの喫茶店(当時はカフェという呼び方はあまりしませんでした)で、友達とワイワイコーヒーを飲みながら、レジ横のピンク電話で有線放送に電話リクエストをしたものでした。聴きたい曲名を伝えると「約30分で放送されます」と目安時間を教えてくれる親切なシステム。スマホもポータブルCDプレーヤーもない時代ですので、この電話リクエストの存在には大変感謝しました。自分の小遣いの中から電話代10円を出したのですから、曲がかかるのが待ち遠しいのなんのって。家にもこの有線放送があったらな〜と叶わぬ夢をみていました。ところが80年代も後半に入ると「有線放送」が聴けるアパートが誕生しました。友達が入居したと聞くとかけつけてやたらとチャンネルを変えてあれこれ聴いた思い出があります。家で有線放送が聴けるサービスが実は今でもあるんです。それがUSEN音楽放送の家庭用BGMサービス「USEN Home」。そうです、あの時のリクエストしてワクワクした気持ちがまた味わえます。それだけではありません。懐かしの80年代ヒットチャートやサザンオールスターズ、松任谷由実、矢沢永吉などアーティスト専門のチャンネルもあって、家にいながら懐かし音楽に浸ることができます。いまや音楽サービスは数あれど、やっぱり好きなジャンルが選曲されて流れるのは嬉しいですよね。