「ECサイトにID決済(アカウント決済)を導入すると良いと聞いたが、具体的なメリットや導入方法が分からない」といった悩みを抱えるEC事業者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ECサイトにおけるID決済の仕組みや、導入のメリット・デメリット、そして具体的な導入手順について詳しく解説します。導入を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
そもそもID決済とは
「ID決済(アカウント決済)」は、キャッシュレス決済の一形態で、外部サービスに登録された情報を利用して支払いを行います。ID決済では、ユーザーはIDやパスワードを用いて連携する外部サービスのアカウントにアクセスすることで、決済を完了させられます。
ID決済の最大の特徴は、決済の簡便性です。ECサイト利用時に、ユーザーは購入する際にクレジットカード番号、メールアドレス、住所などの個人情報を毎回入力する必要がありません。外部サービスに既に登録されている情報を活用するため、スムーズな決済が可能となります。
なお、株式会社NTTドコモも、実店舗で使える電子マネー決済「iD決済」サービスを提供していますが、iD決済とID決済(アカウント決済)は別のサービスです。
ID決済利用の流れ
ECサイトでID決済を利用する際の一般的な流れについてご紹介します。スマートフォン・PCでのID決済ともに、外部サービスへのログインを経て決済を行います。
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ユーザーが商品をカートに入れ、決済手続きへ進む
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決済方法の選択肢から、希望するID決済サービスを選ぶ
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ログイン画面が表示されるので、ログインする
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支払い内容が画面に表示されるので、内容を確認し、確定ボタンを押す
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決済完了の画面が表示されれば、決済が完了する
このように、ID決済はスマートフォンやPCから簡単に利用でき、従来の決済方法と比べて手続きが簡略化されているのが特徴です。
注意点として、ID決済を利用する場合、ユーザーは各決済サービスのアカウントを事前に作成し、必要な情報を登録しておく必要があります。また、サービスによっては、ユーザーがECサイトの決済画面から外部の決済アプリを起動し、画面上に表示されるQRコードをスマートフォンで読み取って決済を行うものもあります。
スマホ決済との違い
スマホ決済は、実店舗・オンラインの双方に対応したキャッシュレス決済方法で、スマートフォンを使用するQR(バーコード)決済やキャリア決済などの総称です。例えばQR決済では、利用者はアプリを起動し、QRコードを表示して店員に読み取ってもらうか、決済時に表示されるQRコードを自分で読み取って決済を行います。
一方、ID決済はECサイトで使える決済方法で、事前に登録された情報を用いてオンラインで決済を完了させる方式です。スマホ決済がデバイスに依存するのに対し、ID決済はデバイスに依存せず、PCやタブレットなど様々な端末から利用可能です。
クレジットカード決済との違い
ECサイトでの支払い方法にはクレジットカード決済もありますが、クレジットカード決済では、ユーザーが決済ページで都度カード情報を入力する必要があります。
ID決済でクレジットカードを利用する場合、事前に登録されたアカウント情報を用いるため、毎回クレジットカード情報を入力する必要がありません。また、ID決済では、クレジットカード決済だけでなく、銀行口座からの直接引き落としでの決済も可能です。
代表的なID決済サービス5つ
ID決済にも対応した代表的な決済サービスを5つご紹介します。実店舗向けとID決済向け(ネット決済・オンライン決済)のサービスページが分かれている場合もあるため、導入を検討する際は、ID決済のサービスページをご確認ください。
PayPay
PayPayは、PayPay株式会社が提供する決済サービスです。ユーザーはクレジットカードや銀行口座からPayPayアプリにチャージした金額を用いて決済を行います。キャッシュレス決済の中でも利用者が多く、幅広い年代に親しまれています。
PayPayの魅力は、PayPayモールやYahoo!ショッピングなどのオンラインストアで利用できることや、定期的に実施されるポイント還元などのユーザー向けプロモーションにあります。
ECサイトにPayPayオンライン決済を取り入れると、ポイント獲得やお得なショッピングに興味のあるユーザーを引き付けやすくなります。特に、日常的にID決済を使用する若い世代を自店舗のターゲットにしている場合は、導入を検討する価値があるでしょう。
メルペイ
メルペイは、株式会社メルカリが提供する決済サービスで、主にメルカリとドコモのユーザーをターゲットとしています。
メルペイでは、メルカリでの売り上げ金を支払いに使用でき、銀行口座から入金した残高での支払いも可能です。さらにメルペイはNTTドコモと連携しているため、ユーザーがアカウントを連携すればdポイントの利用も可能です。
そのため、メルカリユーザーだけでなく、ドコモのdポイントを活用したいユーザーの獲得も見込めます。
楽天ペイ
楽天ペイは、楽天グループ株式会社が運営する決済サービスです。楽天サービスを日常的に利用する人々から支持されており、楽天市場以外のECサイトでも楽天ポイントを使用できる点が特徴です。
楽天ペイは決済手段が豊富で、楽天カードや楽天銀行からの入金、楽天ポイントでの支払いができます。ポイント還元などのキャンペーンを繰り返し実施している点も魅力です。
ECサイトに楽天ペイを導入することで、ユーザーは効率的に楽天ポイントを貯めたり、貯まったポイントをネットショッピングで活用したりできます。特に楽天のサービスをよく利用するユーザーへのアプローチに効果的でしょう。
LINE Pay
LINE Payは、LINE株式会社が提供する決済サービスです。コンビニのATMや金融機関などから現金を入金し、その残高を使って決済を行います。アプリ内の友人への送金も可能です。
メッセージアプリとして広く普及しているLINEを用いて決済ができるため、幅広い層のユーザーの取り込みに効果的です。その中でも特にクレジットカードを持っていない人や、LINEアプリに慣れ親しんだ若い世代の誘致に役立つでしょう。
決済の過程でECサイトが運営するLINEアカウントの友だち登録を促すことで、特別クーポンの配布やキャンペーン、お得な情報をユーザーに届けられる点も特徴です。LINEアカウント経由での新規顧客やリピーターの獲得も期待できます。
Apple Pay
Apple Payは、Appleが提供する決済サービスで、ユーザーはFace IDやTouch IDを使用するか、Apple Watchをダブルクリックするだけで決済ができます。iOSアプリ、iPadOSアプリ、watchOSアプリ、SafariのWebサイト、さらにMessagesやiMessage Extensionで支払いを行えます。スマートフォンを使った店頭でのタッチ決済と、ECサイトでの決済の両方に対応しています。
Apple Payは、Apple製品を利用しているユーザーの誘因に効果的です。
ID決済の導入で期待できるメリット
ECサイトにID決済を導入することによって、さまざまなメリットが期待できます。以下では、その詳細について解説します。
顧客満足度・集客力の向上
ECサイトにID決済を取り入れることで、多様なユーザー層を取り込むことができ、集客力を高められるでしょう。
まず、ID決済を導入すると、クレジットカード決済以外の選択肢も提供でき、ユーザーの心理的な購入ハードルを下げられます。これにより、より多くのユーザーが気軽に購入を決断しやすくなります。
また、ID決済の導入は若年層など新規顧客層の獲得にも効果的です。特に、クレジットカードを持たない大学生などの若い世代を取り込むのに有効で、スマートフォンを使った決済に慣れている世代にとって、ID決済は使いやすく魅力的な選択肢となるでしょう。
ECサイトでのカゴ落ち防止
カゴ落ちとは、ECサイトでカートに商品を入れたまま、ユーザーがサイトから離脱することを指します。クレジットカード決済では、個人情報の入力が必要で、この手間がカゴ落ちの原因となることがあります。
ECサイトでID決済を導入することで、ユーザーは決済時にクレジットカード情報を都度入力する必要がなくなり、既に登録済みの情報を利用して簡単に決済を完了できます。決済の手間が減ることで、購入意欲が高まっている状態でそのまま決済を終えられるため、カゴ落ちの減少が期待できるでしょう。
また、多くのID決済サービスは魅力的なキャンペーンやポイントプログラムを提供しています。これらの特典は、ユーザーの購買意欲を高める効果があり、その恩恵を受けられる点もID決済導入の利点です。
売り上げ拡大
ID決済の導入によって、ユーザーは財布の中身を気にせず買い物をしやすくなるため、単価の高い商品であっても購入してもらいやすくなるでしょう。また、現金の制約がなくなることで、衝動買いや追加購入の機会が増える点も利点です。さらに、スムーズな決済体験は顧客満足度を高め、リピート率の向上にもつながる可能性があります。
これらの複合的な要因により、ID決済は単なる決済方法の追加にとどまらず、ユーザーの購買を促進し、売り上げの拡大が期待できるでしょう。
ID決済導入のデメリット・注意点
ID決済の導入によって多くのメリットが得られますが、注意すべきポイントもあります。以下ではその詳細を解説します。
導入に際して決済手数料がかかる
ID決済の導入には、一般的には初期費用・月額費用は発生しませんが、決済手数料が発生します。決済手数料は、取り引き額に対して課せられる一定の手数料で、手数料率は決済サービスによって異なりますが3~6%程度が目安です。
ただし、サービスによっては一定期間、決済手数料を無料にするキャンペーンも実施していることがあるため、その期間に契約をすると決済手数料の負担を下げられるでしょう。
入金サイクルがサービスごとに異なる
ID決済の入金サイクルは決済サービスごとに異なります。そのため、ECサイトの売り上げが好調であっても、収益が口座に反映されるまでの時間が長引けば、資金繰りに支障をきたす可能性があります。最悪の場合、利益を出しているにもかかわらず、資金不足に陥るリスクもあるでしょう。
資金繰りの問題への対策としては、各ID決済サービスの入金タイミングを把握し、売り上げ金の入金日を正確に予測できるようにしておくことです。ただし、複数の決済サービスを利用している場合、それぞれの入金スケジュールが異なると、管理が複雑化する恐れがあります。したがって、各サービスと個別に契約するよりも、決済代行会社もしくはカート事業者と契約をして一元管理できるようにするのがおすすめです。
ID決済を導入する流れ
ID決済は、以下の流れで導入を進めていきます。
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直接契約か提携パートナーとの契約かを選ぶ
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申し込む
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審査を待つ
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サービスを開始する
それぞれのステップでするべきことの詳細を見ていきましょう。
直接契約か提携パートナーとの契約かを選ぶ
ID決済の導入には、直接契約と提携パートナーとの契約があります。それぞれの特徴を解説します。
直接契約
直接契約方式では、各ID決済サービスと個別に契約を結びます。この方法の利点は、仲介手数料がかからないためコストを抑えられることです。
しかし、複数の決済サービスとの契約や審査手続きに時間と労力を要する点がデメリットです。また、決済サービスごとに手数料率や決済日、入金日が異なるため、管理が複雑化する可能性があるでしょう。
なお、直接契約の場合、LINE Payのように独自に接続開発が必要なケースもあります。その場合、決済サービスより提供されるマニュアルに沿って自社のエンジニアが開発を行います。
提携パートナーとの契約
提携パートナーとの契約では、決済代行会社またはカート事業者との契約を行います。決済提携パートナーの契約では、複数の決済サービスとの契約を代行してもらえるのが特徴です。
そのため、ID決済だけでなく、複数のキャッシュレス決済の導入を一括で行えます。また、申し込みや契約手続きの手間も大幅に削減でき、売り上げ管理や入金処理が一元化されるため経理業務の効率化もできるでしょう。
申し込む
ID決済の申し込み方法は、インターネットもしくは書面による申請方法があります。オンライン申請では、専用の申し込みフォームに必要事項を入力し、書類をアップロードすれば手続きが完了することが多いです。書面では郵送の手間がかかるため、オンライン申請の方が手軽でしょう。
審査を待つ
申し込み後は審査です。審査の目的は、申請者の事業の安定性や信頼性を確認することです。一般的に、審査期間は数日から数週間程度かかります。ただし、業種や申請内容によって変動する可能性があります。
審査をスムーズに進めるためには、申請時に提出した書類が正確で最新のものであることに注意しましょう。
サービスを開始する
ID決済の審査通過後、サービス開始の準備をしますが、サービスや契約方法によって初期設定は異なります。例えば、LINE Payでは、決済代行会社経由の場合、決済代行会社にて決済システム接続のための開発が行われます。そして接続完了後、決済代行会社から専用の管理画面が提供されるため、売り上げ処理方法など基本操作を確認して、運用を開始します。
まとめ
ID決済の導入によって、ユーザーが決済をスムーズに行えるようになります。それによってユーザーの利便性の向上や集客増加、その先の売り上げ拡大が期待できるでしょう。
導入方法には直接契約と提携パートナーとの契約があり、それぞれメリット・デメリットがありますが、提携パートナーを介した方がより多くの決済手段に手軽に対応できます。
導入段階では、申し込みから審査まで各段階で準備が必要ですが、サポートの充実している会社であれば、問題なく進められるでしょう。ID決済の導入にはコストが発生しますが、それ以上のメリットが得られるため、本記事で紹介した内容を参考に、ぜひ導入を検討してみてください。
※USEN PayではID決済(アカウント決済)の導入支援は行っておりませんが、決済代行会社として、「iD決済(電子マネー決済)」をはじめとした各種キャッシュレス決済の契約代行サービスを提供しております。キャッシュレス決済にご興味がある方は、ぜひ以下記事もご覧ください。