レジ不正は、店舗運営において無視できないリスクのひとつです。不正を放置すると経済的損失が生じるだけでなく、人間関係の悪化なども引き起こすため、不正の早期発見と防止は全ての店舗に欠かせない取り組みです。
この記事では、よくあるレジ不正の手口や不正が店舗に与える影響を解説します。不正防止に役立つツールも紹介しているので、不正防止を目指す店舗オーナーの方はぜひ参考にしてください。
目次
レジ不正のよくある手口
レジで発生する不正の手口として、次のようなものが挙げられます。
- レジの空打ち
- 不正な取引消去や返品処理
- レジを通さずに商品を渡す
- お釣りを少なく渡す
- キャッシュドロアから現金を抜き取る
- トレーニングモードを悪用する
それぞれの不正の手口について、以下で詳しく見ていきましょう。
レジの空打ち
レジの空打ちは、特に多い不正の手口です。空打ちとは、会計の際に一部の商品をレジにわざと登録せず、お客様から受け取ったお金の一部を着服することです。
例えば飲食店では、3名分のコースを提供しながらレジには2名分だけ入力し、1名分の金額を着服するケースがあります。この方法ではレジ内の金額に過不足が発生しないため、管理者が不正に気付きにくいのが特徴です。
不正な取引消去や返品処理
完了した取引を消去したり返品処理を行ったりすることで、その分の現金を着服する不正も見られます。この手口を行うには、レジでデータ消去や返品処理ができる権限が必要です。信頼する一部のスタッフだけに権限を与えている店舗も多いかと思いますが、その権限を与えられたスタッフが不正を働いた事例も見られます。
上記のような特定の操作やレジ締めを担当するベテランスタッフが不正に関与するケースもあるため、注意が必要です。
レジを通さずに商品を渡す
会計時に一部の商品をレジに通さず販売し、その商品を横領する不正行為もあります。スタッフが知人と共謀するケースでは不正が発覚しにくく、気付いた時には被害額が膨らんでいるケースも少なくありません。
小売店など購入点数が多い場合は特に、このような不正が見逃されやすくなります。また、不正が発覚しても「レジに登録したつもりだった」と言い逃れをすることも可能なため、管理者の目が行き届きにくい場面では注意が必要です。
お釣りを少なく渡す
わざとお釣りを少なく渡し、差額を着服する手口もあります。特に、100円玉と50円玉など、見た目が似ている小銭をすり替える手口が多く見られます。
お釣りをきちんと確認せずに財布に入れるお客様も多いため、お客様も店舗側も不正に気付きにくいのが特徴です。特に混雑している時間帯ではお客様によるお釣りの確認がおろそかになりがちで、このような不正が発生しやすくなります。
キャッシュドロアから現金を抜き取る
キャッシュドロアや金庫から直接現金を抜き取られるケースも少なくありません。キャッシュドロアには多額の現金が入っているため、「お札を数枚抜いてもバレないだろう」という油断から不正を働いてしまうスタッフもいるのです。
レジ締め時に金額差が発生するため、比較的不正が発覚しやすい手口ではあります。しかし、発覚が遅れたり対策を怠ったりすると多額の被害に発展するため、注意しなければなりません。
トレーニングモードを悪用する
特殊なケースとして、レジのトレーニングモードを悪用した不正があります。トレーニングモードはレジ操作を練習するための機能で、トレーニングモードで会計をしても実際の売上データには反映されません。
これを悪用し、実際の会計をトレーニングモードで入力し、お客様から受け取った現金をそのまま着服するという手口があります。通常のレジ操作と見分けがつきにくいため、周囲のスタッフがレジの画面を注意して見るなどの対策が求められます。
レジ不正が店舗に与える影響
レジ不正は単なる金銭的な損失だけでなく、店舗運営に深刻な支障をきたすおそれがあります。ここでは、レジ不正が店舗に与える影響について解説します。
経済的な損失
レジ不正が店舗にもたらす影響の中で、最も直接的で分かりやすいのが経済的な損失です。不正行為によって本来得られるはずの利益が減少し、最悪の場合、店舗の経営が立ち行かなくなるかもしれません。
1回の被害額は小さかったとしても、それが積み重なると無視できない損失に発展します。不正の発覚が遅れるほど被害額は大きくなるため、不正の早急な発見と対策が必要です。
顧客から信頼されなくなる
レジの不正は、顧客からの信頼を失う原因にもなります。例えば、お釣りを少なく渡すといった手口はお客様に直接的な被害があるため、店舗への不信感が募ります。このようなお店を継続して利用したいと思うお客様はいないでしょう。競合店舗に顧客を奪われたり、クレームが頻発したりして、店舗運営全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
場合によっては、不正が横行している店舗であるといううわさが近隣で広がってしまうかもしれません。そうなると、ますます客足が遠のいてしまいます。
スタッフのやる気を削ぐ
レジの不正行為が頻発すると、スタッフ同士がお互いを疑うようになり、人間関係が悪化してしまいます。さらに、不正を長く放置していると経営者に対する信頼が揺らぎ、スタッフのやる気を削ぐ原因になります。
また、無実のスタッフが「自分が疑われているかもしれない」とストレスを感じることもあるでしょう。これらは離職の原因になり、人材確保の観点からも無視できません。
レジ不正を防ぐための対策
レジの不正を見逃すと、店舗に様々な悪影響があります。そのため、不正を早急に発見する仕組みや不正が起きづらい環境を整えることが大切です。
ここでは、レジ不正を防ぐための具体的な8つの対策を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
レジ点検をこまめに実施する
基本的な対策のひとつが、レジ点検をこまめに行うことです。こまめな点検によってレジ内の金額差に気付きやすくなり、不正が発生した時間や担当者を特定しやすくなります。
また、店舗責任者が頻繁にレジをチェックすることで、スタッフに対して「お金の管理が厳しい店舗である」と印象付けられ、不正抑止につながる効果も期待できます。
レジ点検を怠ると不正になかなか気付けないため、経営者や責任者によるこまめなチェックは欠かせません。
在庫数をこまめに確認する
レジの空打ちやレジを通さずに商品を販売する不正には、在庫数のこまめな確認が有効です。販売数から算出する在庫数と実際の数が一致しない場合、不正が行われている可能性があります。
ただし、不正を行っているスタッフが在庫確認を担当すると、商品の破損などとして処理されるリスクがあるため注意してください。在庫管理を徹底するには、複数のスタッフで確認することが重要です。
レジ周辺に防犯カメラを設置する
防犯カメラをレジ周辺に設置し、お客様とのやりとりやレジ画面を記録することも不正防止に効果的です。現金の抜き取りやトレーニングモードの悪用があれば、防犯カメラの映像を確認して犯人を特定できます。
また、防犯カメラで監視されている中で不正を行うスタッフは少ないでしょう。そのため、防犯カメラの設置をスタッフに周知するだけでも不正の抑止力になります。
スタッフとのコミュニケーションを怠らない
スタッフとのコミュニケーションを日頃からしっかりと行い、良好な関係を築いておくことも大切です。信頼関係がある職場ではスタッフが不正や異変に気付いた際、すぐに報告してもらえるでしょう。反対に、信頼関係が希薄であれば、複数人のスタッフが共謀して不正を行うおそれもあります。
また、職場環境が良好だと、不正の動機自体が生じにくくなるのもメリットです。スタッフとの積極的なコミュニケーションは不正などの情報が寄せられやすくなるだけでなく、不正の発生を防ぐ効果も期待できます。
スタッフの待遇や評価を見直す
不正の背景には、職場や経営者に対する不満やストレスがあるのかもしれません。そのため、スタッフの待遇や評価制度を定期的に見直し、より働きやすい環境を整えることも不正対策として効果的です。
例えば、評価制度が不公平であったり、報酬が不十分だと感じるスタッフは、正当な報酬を得られないことへの不満から不正行為に走るケースがあります。
働きやすく、適切に評価され、報酬にも不満がなければ、わざわざ不正を働こうと考える人は少ないでしょう。このように、経営者がスタッフを大切にすることで防げる不正もあります。
レジ担当スタッフを固定にしない
特定のスタッフがレジを常に担当していると、周囲が不正に気付きにくく、不正を隠蔽されるリスクも高まります。特に、会計とレジ締めを同一スタッフが担当している場合、金額差異が発生しても報告されない可能性があるため注意してください。
複数のスタッフでレジ業務を分担することで相互チェックの機能が働き、不正のリスクを抑えられます。レジ業務が特定のスタッフに偏らないようにすることも、不正対策として有効です。
POSレジを導入する
POSレジは販売データをリアルタイムで収集し、売上や返品処理の履歴、操作ログを詳細に記録する機能を持っています。誰が・いつ・どのような操作を行ったかが全て記録されるため、不自然なデータ消去や返品処理に気付きやすく、犯人もすぐに特定できます。
また、自分の操作が全て記録されると知っていて不正な処理をするスタッフは少ないため、POSレジの導入は不正の抑止としても効果的です。
さらに、クラウドサービスとして提供されているPOSレジなら、店舗外からでもリアルタイムで売上データを確認できるため、こまめなチェックをしやすくなるというメリットもあります。
自動釣銭機を導入する
自動釣銭機の導入は、現金を扱うことで起きる不正の防止に非常に効果的です。自動釣銭機は投入した現金を自動で計算し、正確なお釣りを排出します。スタッフが現金に触れる時間が大幅に短縮され、故意にお釣りを少なく渡すなどの不正がしづらくなるのがメリットです。
お客様側に自動釣銭機を設置し、お客様自身にお金を投入してもらう方法もあります。これならスタッフが現金を扱うことがなく、不正はできません。
レジ不正に効果的なPOSレジの機能
先述の通り、POSレジには不正防止に役立つ様々な機能があります。ここでは、不正防止に特に効果的な2つの機能について詳しく見ていきましょう。
売上データをリアルタイムに確認できる
POSレジの大きな特徴は、売上データをリアルタイムで確認できることです。「レジ点検をこまめに実施する」という不正対策の方法を紹介しましたが、POSレジならこの作業をスムーズに行えます。
クラウドサービスとして提供されているPOSレジなら、パソコンやタブレット、スマートフォンからも使用できるので、レジ本体を操作しなくてもチェックができるのがメリットです。経営者が店舗にいなくてもレジに登録された内容を確認できるようになれば、より監視の目が届きやすくなります。
スタッフの操作ログが残る
POSレジで入力した内容は、全て操作ログが残ります。不正な返品処理やデータ消去があっても、その操作を行ったのが誰なのかすぐに特定できます。
この機能は犯人を特定するだけでなく、不正の抑止力にもなるのがメリットです。不正を未然に防ぎたい場合にも、POSレジの導入は効果的です。
レジ不正に効果的な自動釣銭機の機能
続いて、自動釣銭機の機能について詳しく見ていきましょう。POSレジと自動釣銭機を併用することで、さらに不正防止の効果をアップさせることができます。
釣り銭が自動で排出される
自動釣銭機は正確なお釣りを自動的に排出する機能があり、現金を扱った不正防止に非常に効果的です。自動釣銭機が排出したお釣りをそのままお客様に渡すため、「100円玉を50円玉にすり替える」といった不正はできません。
自動釣銭機を導入することで、不正だけでなく単純な数え間違いもなくなり、レジ会計にかかる時間や手間を軽減できるのもメリットです。レジの混雑が緩和され、お客様にも快適に店舗を利用してもらえるでしょう。
現金の盗難防止
多くの自動釣銭機には高度なセキュリティ機能が備わっており、鍵や認証がなければ開閉ができない仕組みになっています。スタッフが不正に現金を取り出すのは難しく、内部の不正行為だけでなく外部からの盗難防止にも効果的です。
操作ログを記録する機能が付いている自動釣銭機も多く、誰がいつどのような操作を行ったのかが明確に残ります。万が一現金の抜き取りが起きたとしても、迅速に犯人を特定できるでしょう。また、POSレジの操作ログと同様に、操作が全て記録されるのは不正の抑止にもつながります。
セルフレジとしても活用できる
自動釣銭機は、セルフレジとしての活用も可能です。セルフレジはお客様自身で会計を行うため、スタッフが現金を取り扱わず不正の防止につながります。
近年、セルフレジを導入する店舗は増えているため、お客様にも抵抗なく使ってもらえるでしょう。レジ会計の効率化など、不正防止以外のメリットも多くあります。
レジ不正防止にPOSレジを導入する際のポイント
レジの不正防止を目的にPOSレジを導入するなら、次の2つのポイントをチェックしましょう。
- 売上データをリアルタイムに確認できるか
- 自動釣銭機に対応しているか
それぞれのポイントについて、以下で解説します。
売上データをリアルタイムに確認できるか
不正防止に役立つPOSレジの機能として、売上データをリアルタイムに確認できる点を挙げました。この機能があることで、こまめなレジ点検が効率的に行えるので、不正防止を目的にPOSレジを導入するなら必須の機能となります。
クラウドサービスとして提供されているPOSレジなら、データのリアルタイム確認に対応しているものがほとんどでしょう。インターネット経由で店舗以外の場所からもレジのデータが確認できるので、ぜひクラウドPOSの利用を検討してみてください。
自動釣銭機に対応しているか
先述の通り、不正対策には自動釣銭機が役立ちます。POSレジを導入するなら、自動釣銭機との併用も視野に入れましょう。特に現金支払いの比率が多い店舗では、自動釣銭機の導入によって業務効率化やミスの防止も実現できます。
クラウドPOSの場合、プランによっては自動釣銭機に対応していないものもあります。POSレジ選びでは、自動釣銭機に対応しているかどうかの確認も必要です。
レジ不正対策にはタブレットPOSレジがおすすめ
クラウドサービスとして提供されるPOSレジでおすすめなのが、タブレット端末をレジとして使う「タブレットPOSレジ」です。レジに登録されたデータをリアルタイムで確認でき、自動釣銭機との連携に対応したものも多くあります。
クラウドPOSレジの特徴は、必要な周辺機器を選んで導入できる点です。レシートプリンタやキャッシュドロア、キャッシュレス決済端末など、それぞれの店舗に最適な機器構成で導入できます。これにより、大型のレジスターと比較して安価に導入できるのがメリットです。
在庫管理や会計ソフトとの連携など多彩な機能を備えているものもあるため、不正対策はもちろん店舗運営の効率化のためにも導入を検討してみてください。
POSレジと自動釣銭機を導入してレジの不正を防止しよう
レジの不正は店舗に深刻な影響をもたらすため、放置はできません。現在進行形で不正に悩まされている店舗はもちろん、今は不正が起きていない店舗でも対策は必須です。POSレジや自動釣銭機、防犯カメラといったツールの導入だけでなく、コミュニケーションや待遇の見直しも効果的なので、すぐにできることから始めてみてください。
不正対策に効果的なタブレットPOSレジをお探しなら、「USENレジ」がおすすめです。小売店や飲食店など各業種に特化した便利な機能を備えており、自動釣銭機との連携にも対応しています。IT導入補助金の対象で導入コストを大幅に抑えられる可能性もあるため、ぜひお気軽にお問い合わせください。