薬局にシステムや機器を導入する際、「NSIPS(エヌシップス)」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。NSIPSは調剤システム間でデータ連携を行うための仕組みで、活用すると多くのメリットがあります。
この記事では、NSIPSについて詳しく見ていきましょう。NSIPSと連携できる機器や活用するメリット、POSレジとの連携などについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
NSIPSとは「調剤システム処方IF共有仕様」のこと
NSIPSは「調剤システム処方IF共有仕様」といわれる、調剤薬局で使われているさまざまな調剤システムを連携させるための共有仕様です。「New Standard Interface of Pharmacy-system Specifications」の頭文字を取って、NSIPS(エヌシップス)と呼ばれています。
NSIPSはレセコンの処方データをNSIPS共有仕様として出力し、対応する各種調剤機器がそのデータを取り込むという仕組みです。処方データをNSIPSの共有仕様にすることで、異なるメーカーの調剤システム間でもスムーズなデータ連携ができるようになります。
NSIPSが策定された理由
NSIPSは、2005年に福岡県薬剤師会によって策定されました。NSIPSが生まれたのは、薬局のICT化が進んで各種調剤システムの導入が行われた結果、メーカーが異なる機器同士の連動に課題が出てきたためです。調剤システムはそれぞれのメーカー独自の仕様になっているケースが多く、異なる仕様の機器を接続・連動させるには高いコストをかけて複雑な仕組みを構築する必要がありました。
そこで、各メーカーの仕様を統一する目的で策定されたのがNSIPSです。NSIPSに対応した調剤システムなら、メーカーが異なっていてもスムーズに連携できるようになりました。
2012年に福岡県薬剤師会から日本薬剤師会に著作権が移管された後も、多くのメーカーがNSIPSに賛同して各種調剤システムに実装しています。
NSIPSと連携できる機器
NSIPSと連携できる機器には、次のようなものがあります。
- レセコン
- 電子薬歴
- 全自動分包機
- 薬袋発行機
- 調剤監査
- POSレジ
ここでは、各機器の役割とNSIPSと連携することで可能になることを詳しく見ていきましょう。
レセコン
レセコン(レセプトコンピューター)とは、診療報酬を請求するために必要な診療報酬明細書(レセプト)を発行するシステムのことです。医療機関は健康保険組合などの支払機関にレセプトを送り、適正な内容であれば診療報酬が受け取れるという仕組みになっています。
レセコンとNSIPSを連携させると、レセコンで作成した処方データを各調剤システムがスムーズに取り込めるようになります。
電子薬歴
電子薬歴とは、それぞれの患者の処方内容や服薬情報、体質や副作用歴などを記録するためのシステムです。以前はこれらの情報を紙で管理していましたが、薬局のICT化が進んで薬歴も電子データで管理するようになりました。電子薬歴を活用すると、紙の保管スペースが不要になり、破損や紛失のリスクも下げられます。
NSIPSに対応した電子薬歴は、レセコンに登録された診断結果や処方内容をもとに薬歴データを更新できるので、これらを手入力する手間や入力ミスをなくせるのがメリットです。
全自動分包機
全自動分包機とは、入力された処方内容に応じて薬を自動で一包化できる機器のことです。一包化とは1回に服用する薬を袋にまとめることで、服用する薬の種類が多い場合や服用のタイミングによって錠数が異なる場合などに、患者の飲み間違いを防ぐために処方時に薬剤師が行います。
NSIPSに対応した全自動分包機は、レセコンや電子薬歴と連携して処方内容を取り込めるようになり、一包化の作業をより効率化できるでしょう。
薬袋発行機
薬袋発行機とは、薬袋に患者の氏名や処方内容、薬局名などを印刷するための機器のことです。機器に登録された処方内容を正確に薬袋に印刷できるため、薬を処方する際の業務効率化につながります。
薬袋発行機がNSIPSに対応していると、レセコンなど処方内容が登録されたシステムからデータを連携できるため、薬袋発行機側でデータを入力する必要がありません。入力ミスを防ぎ、正しい内容を素早く印刷できます。
調剤監査
調剤監査とは、処方内容の通りに薬が用意されているかを確認する作業のことです。処方内容と違った薬を渡してしまわないように、複数人の薬剤師によるダブルチェックを行います。ただし近年では、そのチェック作業の一部に調剤監査システムを活用する薬局も増えています。調剤監査システムを活用することで、手作業によるミス防止やチェックにかかる時間の短縮が可能です。
NSIPSに対応した調剤監査システムは、レセコンの処方データを連携して正しい処方内容と用意された薬を効率的に確認できます。
POSレジ
POSレジとは、販売に関するさまざまなデータを収集・管理できるレジのことです。POSレジを使って会計を行うと、販売した商品の種類や個数、価格や時間といったデータが自動で保存され、保存されたデータを使って売上傾向などの分析をすることができます。
NSIPSに対応したPOSレジはレセコンの処方データを連携できるので、「処方箋を見てレジに入力する」という作業が必要なくなります。そのため、レジ会計の効率化が可能です。
薬局がNSIPSを活用するメリット
薬局がNSIPSを活用すると、「業務効率の向上」と「コスト削減」という大きく2つのメリットがあります。この2つのメリットについて、以下で詳しく解説します。
業務効率の向上
NSIPSを活用すると、レセコンや電子薬歴、全自動分包機など、薬局で使われている各種調剤システム間のデータ連携がスムーズにできるようになります。それぞれのシステムに処方データを入力する必要がなくなるため、業務効率の向上が可能です。
薬剤師は調剤や服薬指導など仕事が多く、ちょっとしたミスが大きな事故につながることもあるため、システムによる自動化を進めている薬局も少なくありません。もちろん人の目によるチェックも重要ですが、NSIPSによるデータ連携は手作業を減らし、薬剤師の負担やミスを減らせるという大きなメリットがあります。
コスト削減
各種調剤システム間でNSIPSを使わずにデータ連携をする場合、システムの数だけ専用の連携ソフトが必要で、準備には多くのコストや手間、時間がかかります。一方、NSIPSの賛同メーカーの機器ならNSIPSひとつで各種機器間でのデータ連携が可能で、コストを抑えられるのもメリットです。
また、NSIPSの著作権を持つ日本薬剤師会は賛同メーカーと「NSIPS対応製品は機器に標準搭載すること」「機器の連動にかかる導入費用は実費程度に抑えること」という2つを取り決めています。そのため、どのメーカーの機器を選んだとしても費用を抑えやすくなっています。
NSIPSはPOSレジとの連携がおすすめ
NSIPS対応の調剤システムの導入を検討している、もしくは既に導入している場合は、NSIPS対応のPOSレジとの連携を検討してみてください。
NSIPSに対応したPOSレジはレセコンから処方データを取り込むことができ、これによって処方箋をもとに販売する医薬品と一般医薬品を一度に会計できるようになります。処方箋の内容をレジに打ち込む必要がなく、入力ミスの防止も可能です。
このように効率的かつ正確なレジ会計ができるので、体調の悪いお客様を待たせることなく、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
薬局にPOSレジを導入して業務効率化を目指そう
NSIPSは各種調剤システムのための共有仕様で、NSIPSに賛同するメーカーによって多くの調剤システムに実装されています。処方データの仕様を共有することでデータ連携をスムーズに行えるようになり、調剤薬局の業務効率化やコスト削減が可能です。
レセコンや電子薬歴といった医療機関や薬局特有のシステムだけでなく、POSレジの中にもNSIPSに対応したものがあります。NSIPSに対応したPOSレジは薬局のレジ会計を格段に効率化させてくれるので、薬局にPOSレジを導入するならNSIPS対応かどうかをチェックしてみてください。