「注文が集中して手書き伝票が散乱している」「注文の優先順位が分からない」「手書き伝票を紛失・汚損して注文内容が分からない」
飲食店の厨房で、このようなお悩みを抱えていませんか?忙しい時間帯ほど、注文管理は煩雑になりがちです。しかし、これらの課題は「キッチンディスプレイシステム(KDS)」を導入することで解決することができます。
本記事では、キッチンディスプレイの基本的な仕組みから、導入によるメリット、具体的な機能、そして自店舗に合った製品の選び方まで詳しく解説します。厨房の業務効率化とサービス品質の向上を目指す店舗は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
| ▼本記事のポイント | |
|---|---|
| キッチンディスプレイシステム(KDS)とは? | 注文情報を厨房のディスプレイに集約し、調理と提供を効率化するシステムのこと。 |
| キッチンディスプレイの主な機能 |
|
| キッチンディスプレイ導入のメリット |
|
1. キッチンディスプレイシステム(KDS)とは?

キッチンディスプレイシステム(KDS)とは、店舗内の注文情報を厨房内のディスプレイにリアルタイムに表示し、調理スタッフが商品名、数量、調理方法などの注文内容を一目で確認できるシステムのことです。
ハンディターミナルやモバイルオーダー、テーブルに設置されたセルフオーダー端末などから受けた注文は、瞬時に厨房のディスプレイに送信されます。この機能があるため、ホールと厨房間でのスムーズな情報伝達が可能となり、注文から提供までの一連の流れを効率化できます。
なお、KDSは「キッチンディスプレイ」や「キッチンモニター」とも呼ばれます。
1-1. 従来の伝票とデジタル伝票の違いとは?
「手書き伝票」「キッチンプリンタ」「デジタル伝票」の3つの方式を、管理のしやすさやコストなどの観点から比較してみましょう。
| 伝票方式 | 特徴 |
|---|---|
| 手書き伝票 | 【メリット】
|
| キッチンプリンタ | 【メリット】
|
| デジタル伝票(キッチンディスプレイ) | 【メリット】
|
2. キッチンディスプレイ導入により期待できる効果とは?

キッチンディスプレイを導入することで、フロアやキッチンスタッフ、そして店舗運営全体に大きなメリットが期待できます。どのような効果があるのかより詳しく見ていきましょう。
2-1. フロアスタッフの業務効率化
注文を受け付けるハンディターミナルとキッチンディスプレイを連携させることで、フロアスタッフの注文受付から料理提供までの一連の業務プロセスを効率化できます。具体的には、以下のようなメリットがあります。
-
ハンディで受けた注文がキッチンへ直接送信されるため、伝票作成や厨房へ伝票を届ける時間が不要になる
-
手書きや口頭ではなく正確なデータで注文を共有でき、聞き間違いや記載ミスに起因するトラブルを防げる
2-2. キッチンスタッフの作業精度向上
キッチンディスプレイで注文を管理することで、キッチンスタッフの注文管理と調理作業の効率が向上します。得られるメリットの詳細は、次の通りです。
-
注文情報がテキストデータで表示され、手書き文字による読み間違いをなくし、内容を正確に把握できる
-
調理ステータスが画面上で共有されるため、 メニューの取り違えや調理の重複を防ぎ、食材や時間のロスを削減できる
-
アレルギー情報などの注意事項が強調表示されるため、 個別注文への対応漏れを防ぎ、お客様の安全性と満足度を高められる
-
全ての注文とステータスがディスプレイに集約・可視化されるため、 調理の進捗状況をキッチンスタッフ全員でリアルタイムに共有できる
-
テーブルごとの注文や調理時間を考慮して調理順を自動で最適化するため、 複数料理の同時提供や温度管理の提供品質を向上できる
2-3. 店舗運営の効率化・コスト削減
キッチンディスプレイを導入して業務をデジタル化することで、店舗運営の改善にも貢献できます。例えば、以下のような効果が期待できます。
-
注文をデジタルデータで管理するため、 紙伝票やプリンター用紙などが不要になり、消耗品費を削減できる
-
店舗全体のオペレーションが効率化され、スタッフ一人ひとりの作業負荷が軽減し、 人件費の最適化や労働環境の改善に繋げられる
-
オーダーミスや調理ミスに起因する食材の廃棄ロスを抑制し、原価率の改善を実現できる
このように、業務のデジタル化は、消耗品費の削減だけでなく、人件費や原価率といった店舗運営全体の売上改善にも繋げられます。
3. キッチンディスプレイの機能詳細は?

キッチンディスプレイには、厨房業務を円滑にするための様々な機能が搭載されています。ここでは、代表的な機能として以下の3つを詳しく見ていきましょう。
-
テーブル別注文管理機能
テーブルごとの注文状況を正確に管理できる -
調理履歴機能
過去の調理履歴を確認でき、作業の重複や漏れを防止できる -
デシャップ機能
調理品と非調理品を分けて管理でき、提供を効率化できる
3-1. テーブル別注文管理機能
テーブル別注文管理機能は、テーブルごとの注文状況を個別に表示・管理する機能です。この機能はさらに、注文の表示・分類、詳細確認、進捗管理などの細かい機能に分かれており、複数の注文を正確に処理するのに役立ちます。
3-1-1. 注文表示・分類機能
注文表示・分類機能は、テーブル単位での注文表示や、新規・追加注文の区別を行う機能のことです。この機能により、以下のようなことが可能になります。
-
テーブルごとに注文を個別表示で確認でき、混雑時でも注文の取りこぼしを防止できる
-
新規注文と追加注文を区別して確認でき、テーブルごとの料理提供タイミングを最適化できる
-
追加注文の「割り込み」表示で見逃しを防止でき、作業効率を向上できる
これらの表示機能によって、複数の注文を整理し、見落としを防ぐことで、効率的な注文処理ができます。
3-1-2. 注文詳細確認機能
注文詳細確認機能は、注文内容の詳細表示やポップアップ表示を行う機能のことです。キッチンスタッフは注文伝票をタップするだけで、メニューの詳細情報やお客様からの特別な要望(アレルギー対応・味の調整など)をポップアップ画面で瞬時に確認できます。この機能により、複雑なオーダーや見落としがちな指示も確実に対応でき、お客様一人ひとりの要望に沿った質の高いサービス提供できます。
3-1-3. 調理進捗管理機能
調理進捗管理機能は、調理状況をシステム上で管理し、スタッフ間で情報共有する機能のことです。調理状況の進捗をキッチンスタッフ全員で共有できるので、作業の重複や漏れを防止できます。
キッチンとホールの間で調理の進捗をリアルタイムに共有することで、スムーズな連携が生まれ、最適なタイミングで料理提供を実現可能です。
3-1-4. 優先順位・強調表示機能
優先順位・強調表示機能は、伝票情報の一覧表示や経過時間の視覚化、重要注文の強調表示を行う機能のことです。この機能で実現できることは、以下の通りです。
伝票番号、テーブル番号、注文種別を一目で確認でき、複数の注文を整理して管理できる
経過時間とカラーラベルで調理の優先順位を視覚的に把握でき、提供時間の遅延を防止できる
注目すべきメニューを記号等で視覚的に強調でき、見落としを防止できる
注文情報を視覚的に整理し、優先順位を明確にすることで、調理の遅延や見落としを防ぎ、キッチン全体の生産性を高められます。
3-2. 調理履歴機能
調理履歴機能とは、厨房で調理した料理の履歴を一覧表示し、過去の注文内容や調理状況を素早く確認できる機能です。この機能には、以下のようなメリットがあります。
-
伝票番号、テーブル、メニューなどが一覧で表示され、調理業務の振り返りや改善に活用できる
-
お客様からの問い合わせがあった際に、履歴から該当する注文を素早く特定でき、迅速で正確な対応ができる
調理履歴機能は「見える化」によって、厨房の業務管理を効率化し、クレーム対応や業務改善にも大きく貢献します。
3-3. デシャップ機能
デシャップ機能とは、調理品と非調理品を分けて管理し、ドリンクやデザートなどの非調理品を効率的に提供する機能です。この機能の利点は、次の通りです。
-
デシャップ(キッチンで調理する必要のない商品)を通常の調理品とは分けて表示でき、ドリンクカウンターなどのスタッフが効率的に作業できる
-
注文時間や数量、優先順位が明確に表示され、非調理品の提供順序を適切に管理できる
調理品と非調理品の管理を分けることで、各担当者が自身の作業に集中でき、ドリンクやデザートなどの提供を効率化できます。
4. キッチンディスプレイに関するよくある質問

キッチンディスプレイに関するよくある質問にお答えします。
Q1. どんな飲食店におすすめ?
A. キッチンディスプレイは、注文量が多く回転率が重要な業態や、ホールと厨房の連携が複雑な店舗に特におすすめです。具体的には、以下のような業態が挙げられます。
-
回転率が重視される業態(ファストフード、フードコートなど)
注文処理を迅速化することで回転率を向上させ、売上拡大を実現できる -
注文やオーダー数の多い繁盛店
常に多くのオーダーが入り管理が煩雑になりがちだが、システムで大量の注文を整理して管理し、調理漏れや提供遅れを防止することで、顧客満足度の維持と安定したサービス提供ができる
このように、迅速な注文処理と正確な管理が求められる店舗において、キッチンディスプレイは特にその効果を発揮します。
Q2. 小規模店舗でも導入した方がよいのか?
A. キッチンディスプレイは小規模店舗にとっても導入効果が期待できるシステムです。少人数で店舗を運営する場合、情報共有の効率化がスタッフ一人ひとりの負担軽減に繋がるためです。キッチンディスプレイを導入すれば、ホールと厨房の状況がリアルタイムに共有され、口頭での確認や伝票の受け渡しが不要になるため、連携ミスを防止しやすくなります。したがって、店舗の規模に関わらず、限られた人員で効率的に店舗を運営したい場合には、キッチンディスプレイの導入が有効な選択肢となります。
Q3. 最適な導入タイミングは?
A. キッチンディスプレイの最適な導入タイミングは、店舗の状況によって異なります。新規開店時が最も効果的ですが、既存店舗でも閑散期を選ぶことで安全かつスムーズな導入が実現できます。
-
新規店舗の場合
物件選定後、POSレジ導入と併せて検討することがおすすめ。開店前の研修期間やプレオープン時に操作性やオペレーションを実践することで、オープン直後から効率的な店舗運営が可能 -
既存店舗の場合
来客数が比較的少ない閑散期を選ぶことで、スタッフの習熟期間を十分に確保でき、繁忙期に備えた体制構築ができる
いずれのタイミングでも、スタッフの習熟期間を十分に確保することが、システムをスムーズに定着させるための鍵となります。
Q4. 不具合が起きた際は?
A. キッチンディスプレイで不具合が起きた際は、まずマニュアルやサポートサイトを基に基本的なトラブルシューティングを行い、解決しない場合はメーカーのサポートデスクに連絡するのが一般的な流れです。
-
STEP1.基本的な対処
メーカーから配布されるマニュアルまたはサポートサイトに基づき、端末の再起動やWi-Fi接続の確認などを行うことで、多くの不具合を解決できます -
STEP2.サポートデスクへの連絡
基本対処で解決しない場合は、サービス提供元のカスタマーサポートなどに連絡することで、専門スタッフから迅速な対処方法を受けることが可能です
このように、基本的な対処法と専門のサポート体制があれば、万が一のトラブルにも落ち着いて対応できます。
5. キッチンディスプレイの選定ポイントは?

自店舗に最適なキッチンディスプレイを選ぶためには、機能、ハードウェア、操作性、サポート体制の4つのポイントを押さえる必要があります。
5-1. 機能面:自店舗に適しているか確認する
店舗の状況によって最適な機能は異なりますが、以下のような点を考慮してキッチンディスプレイを選定しましょう。
-
店内オーダーのみの店舗
基本的な注文表示機能があれば十分な場合が多く、シンプルな機能により初期費用やランニングコストを抑えて業務効率化を図れる -
テイクアウト・デリバリー併用店舗
受注チャネル別の管理機能が必要となり、店内・テイクアウト・デリバリーの注文を区別して管理できる -
コース料理提供店
調理工程管理機能を重視することで、複雑な調理工程を体系的に管理し、品質の高いサービス提供ができる
このように自店舗の営業スタイルやメニュー構成を考慮し、必要な機能を備えたシステムを選ぶことが、導入効果を高める上で重要です。
5-2. ハード面:厨房の規模に合った機器を選ぶ
キッチンディスプレイの2つ目の選定ポイントは、厨房の広さやスタッフの人数に適したハードウェア(画面サイズなど)を選ぶことです。物理的な設置環境や視認性を考慮し、以下の点を確認しましょう。
-
小規模店舗の場合
限られた厨房スペースを有効活用できるよう、省スペースで設置できるタブレット型のモニターが適しています -
大規模店舗の場合
複数のスタッフが同時に情報を確認できるよう、視認性の高い大画面ディスプレイが適しています
このように、厨房の物理的な環境と作業動線を考慮して最適なハードウェアを選ぶことで、視認性と操作性を両立させることができます。
5-3. UI面:スタッフ全員が直感的に使えるか
キッチンディスプレイの3つ目の選定ポイントは、システムのUI(ユーザーインターフェース)、つまり操作のしやすさや設定の簡易性です。以下の点を確認し、スタッフ全員が直感的に使えるシステムを選びましょう。
-
操作性
新人スタッフでも研修なしで使えるほど、シンプルな操作画面になっているか -
設定の簡易性
管理者がメニュー追加やレイアウト変更などを簡単に行えるか -
注文管理のしやすさ
日常的に行う注文管理に手間がかからず、運用負担が少ないか
スタッフ全員が直感的に使えるシステムを選ぶことは、導入後の定着を早め、教育コストの削減にも繋がります。
5-4. サポート面:万が一の際に迅速な対応が受けられるか
キッチンディスプレイの4つ目の選定ポイントは、サポート体制の充実度です。厨房という過酷な環境での利用を想定し、安心して運用を続けるために、以下の点を確認しましょう。
-
機器の保証・メンテナンス
厨房環境での故障リスクに備え、機器の耐久性や保証、メンテナンス体制は整っているか -
緊急時の対応
営業中にトラブルが発生した場合、迅速に対応してくれるサポート窓口(マニュアル提供、サポートサイト、電話、駆けつけ保守など)があるか -
導入・運用の支援
導入時のスタッフトレーニングや運用後のフォローまで、一貫したサポートを受けられるか
機器のトラブルが営業に直結する飲食店にとって、導入から運用後まで一貫した手厚いサポート体制は、安心してシステムを使い続けるための重要な要素と言えるでしょう。
6. キッチンディスプレイ導入における注意点

キッチンディスプレイ導入における注意点も押さえておきましょう。
6-1. ハンディターミナル・POSレジ連携の必要性
キッチンディスプレイは単独では機能せず、「OES(Order Entry System)」と連携することで初めて、その効果を発揮するシステムである点に注意が必要です。
OES(オーダーエントリーシステム)とは、ハンディ端末やタブレット端末といった注文受付システムの総称です。キッチンディスプレイはこれらのOESから送られる注文データと連動して動作します。また、OESはPOSレジと連携して使用されるため、キッチンディスプレイもPOSレジと連携するケースが一般的です。キッチンディスプレイの導入には、POSレジの導入が前提となる場合がほとんどです。
これらの連携により、注文受付から厨房での調理指示、会計処理や売上分析まで一連の業務フローが一元管理され、より効率的な店舗運営が実現できるでしょう。
6-2. 導入前に研修を実施する必要がある
新しいシステムを導入する際は、事前にスタッフへの操作トレーニング期間を設ける必要があります。操作に慣れないまま営業を開始すると、かえってオペレーションが混乱し、お客様にご迷惑をかけてしまう可能性があります。スムーズな移行のために、十分な研修時間を確保しましょう。

