インボイス制度で飲食店に求められる対応とは?制度や必要な対応をわかりやすく解説

インボイス制度で飲食店に求められる対応とは?制度や必要な対応をわかりやすく解説

2025年11月04日

2023年10月から開始されたインボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるには「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となり、その発行には事前登録が求められるようになりました。取引先から登録を求められるケースもあり、制度への理解と適切な対応が今後の店舗経営において欠かせない要素となっています。

本記事では、インボイス制度の概要から、飲食店経営に与える具体的な影響、登録するメリット・デメリット、対応のポイントまでわかりやすく解説します。

目次

  1. 1. インボイス制度とは?わかりやすく解説
    1. インボイス制度の概要
    2. インボイス制度の目的
    3. インボイス(適格請求書)として認められる条件
  2. 2. インボイス制度が飲食店経営に与える影響
    1. 免税事業者
    2. 課税事業者
  3. 3. 飲食店がインボイス制度に対応するメリット
  4. 4. 飲食店がインボイス制度に対応するデメリット
  5. 5. インボイスに対応すべき?飲食店の判断ポイント
  6. 6. 「適格請求書発行事業者」になるためには、どうすればいいの?
  7. 7. 飲食店のインボイス対応、具体的には何をしたらいいの?
    1. POSレジや会計システムの導入
    2. 発行する領収書やレシートの様式を決める
    3. 適切な経理処理を行う
  8. 8. インボイス制度に関連する支援制度
    1. IT導入補助金
    2. 小規模事業者持続化補助金
    3. 少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)
    4. 仕入税額控除の経過措置
  9. 9. インボイス制度に関するよくある質問
    1. 売上規模が小さい店舗でもインボイスに登録すべき?
    2. 免税事業者のままインボイスを発行することはできる?
  10. 10. まとめ:インボイスに対応するならPOSレジの活用がおすすめ

インボイス制度とは?わかりやすく解説

インボイス制度は、消費税の仕入税額控除を適用するために必要な適格請求書(インボイス)の発行と保存を義務づける仕組みです。まずは、制度の概要や目的、インボイスとして認められる条件を確認しておきましょう。

インボイス制度の概要

「インボイス」とは適格請求書のことで、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものを指します。現在発行している「区分記載請求書」に登録番号・適用税率・消費税額等を追加記載した書類・データが必要になります。

インボイス制度とは「適格請求書保存方式」のことで、請求書や納品書の交付や保存に関する制度です。売り手側、買い手側の双方に適用されます。

  • 導入開始:2023(令和5)年10月1日
  • 適用対象:課税事業者/課税事業者と取引関係のある免税事業者
  • 義務化事項:課税事業者※(適格請求書発行事業者)によるインボイス(適格請求書)の発行
  • インボイス発行手続き:「適格請求書発行事業者」の申請を「管轄税務署」へ行う

参考:国税庁「インボイス制度について」

インボイス制度の目的

インボイス制度の目的は、消費税の「仕入税額控除」を正確に行うための仕組みを整えることにあります。仕入税額控除とは、事業者が納税する消費税から、仕入や経費として支払った消費税を差し引ける制度です。

この仕入税額控除によって、取引の各段階で二重課税が起きないようになっており、インボイス制度では、その控除要件として一定の要件を満たす請求書(インボイス)の保存を義務付けることで、消費税の正確な把握を目指しています。

対応必須!インボイス制度「概要~対応すべきこと」まとめ イメージ2 対応必須!インボイス制度「概要~対応すべきこと」まとめ イメージ3

インボイス(適格請求書)として認められる条件

発行する請求書がインボイスとして認められるためには、以下の項目を記載する必要があります。

  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • インボイス登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目にはその旨も記載)
  • 取引金額の総額と適用税率
  • 消費税額

これらの項目を全て記載した書類・データが、仕入税額控除の対象となります。

インボイス制度が飲食店経営に与える影響

インボイス制度の導入により、飲食店経営にも様々な影響が及んでいます。特に、免税事業者と課税事業者とでは求められる対応が大きく異なるため、それぞれの立場に与える影響について解説します。

免税事業者

インボイスを発行できるのは課税事業者に限られており、免税事業者は発行できません。そのため、取引先が仕入税額控除を受けられず、今後の取引に影響が生じる可能性があります。

例えば、接待や会食など交際費としての計上を前提に飲食店を利用する法人のお客様は、インボイスの発行を求めるケースが多く、免税事業者のままでは客足が遠のくリスクがあります。また、仕入税額控除ができないことによる実質的な負担増を理由に、値引き交渉を受ける可能性も否定できません。

こうした状況を踏まえ、免税事業者を継続するか、課税事業者として登録するかの判断が求められます。

課税事業者

課税事業者にとって、インボイス制度への対応は必須です。インボイスを発行するには、「適格請求書発行事業者」としての登録が必要となり、レジや会計システムの見直し、領収書の様式変更などの対応が求められます。

また、発行したインボイスは7年間の保存義務があるため、経理作業の負担も増加します。さらに、仕入税額控除を適用する際に、仕入先が免税事業者である場合は控除対象外となるため、自社の税負担が増えることを想定しておかなければなりません。

このように、課税事業者の場合はインボイス制度への対応に加えて、仕入先の見直しなども含めた総合的な検討が必要です。

飲食店がインボイス制度に対応するメリット

インボイス制度に対応すると、ビジネス利用の機会を広げられるのがメリットです。商談や接待など、会社経費として飲食店を利用するケースでは、多くの場合インボイス対応のレシートが求められます。インボイスに対応していれば、こうしたニーズに応えられるため、継続的な利用や新たな取引先の獲得に繋がる可能性があります。

企業イベントや会議用の弁当など、テイクアウト需要においても同様です。インボイス対応は、結果として他店との差別化や安定的な集客にも貢献する点が大きなメリットです。

飲食店がインボイス制度に対応するデメリット

インボイス対応によるデメリットとしてまず挙げられるのが、課税事業者となることで消費税の納付義務が発生する点です。既に課税事業者である店舗には影響はありませんが、これまで免税事業者だった場合は、実質的に税負担が増えることになります。

また、インボイスに対応するためにシステムの導入や見直しが必要となるケースもあり、それに伴うコストが発生する点も考慮しなければなりません。

さらに、仕入先が免税事業者の場合、その取引については仕入税額控除が適用されないため、収益への影響も懸念されます。

インボイスに対応すべき?飲食店の判断ポイント

インボイス制度への対応が必要かどうかは、店舗の売上規模や来店客層によって異なります。まず、年間の課税売上高が1,000万円を超える場合は、課税事業者として消費税の納税義務が発生し、インボイス対応も必須です。

一方、売上が1,000万円以下の事業者は免税事業者としての継続が可能であり、インボイスに登録しないという選択肢もあります。この場合の判断材料のひとつが、お客様からインボイス対応を求められるかどうかです。

法人利用や接待・会食が多い店舗では、経費処理の都合からインボイス発行を求められることが多いため、対応を検討した方が良いでしょう。反対に、個人利用が中心の店舗では、インボイスの有無が問題にならないケースもあります。

このように、自店舗の取引状況や顧客層を見極め、今後の事業方針を踏まえて対応の要否を判断しましょう。

「適格請求書発行事業者」になるためには、どうすればいいの?

「適格請求書発行事業者」になるためには、所轄税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要があります。

申請は紙の申請書による方法のほか、e-Taxを利用したオンライン申請も可能です。登録が完了すると「登録番号」が付与され、その番号を請求書などに記載することで、インボイスの発行が可能となります。

対応必須!インボイス制度「概要~対応すべきこと」まとめ イメージ4

飲食店のインボイス対応、具体的には何をしたらいいの?

ここでは、飲食店がインボイス制度への対応を進める上で必要となる、3つの具体的な対応を紹介します。

POSレジや会計システムの導入

インボイス制度に対応するためには、適格請求書の要件を満たしたレシートを発行できるPOSレジや会計システムの導入が求められます。手書きの請求書や領収書でも、必要な項目が正しく記載されていればインボイスとして認められますが、レジによる発行の方が記載ミスや不正リスクを抑えられ、信頼性の面でも優れています。現在使用しているレジや会計ソフトがインボイス非対応の場合は、早めの見直しが必要です。

発行する領収書やレシートの様式を決める

所定の要件を満たせば、請求書だけでなくレシートもインボイスとして認められます。これらは「適格簡易請求書(簡易インボイス)」と呼ばれ、一定の記載要件を満たす必要があります。

レシートが「適格簡易請求書」として認められるには、適用税率や適用税率毎の消費税額などの記載が必須となります。

対応必須!インボイス制度「概要~対応すべきこと」まとめ イメージ5

■税率ごとに区分した消費税額等を記載する場合

記載事項①名称・登録番号インボイス発行事業者の氏名または名称および、登録番号(T+13桁の法人番号または13桁の数字)
記載事項②取引年月日取引の年月日
記載事項③品名・区分品名および軽減税率対象商品の区分
記載事項④税額税率ごとに区分して合計した対価の額
記載事項⑤適用税率区分税率ごとに区分した適用税率

適切な経理処理を行う

インボイス制度では、発行・受領したインボイスの適切な管理が重要です。取引先が課税事業者か免税事業者かを明確に区分し、仕入税額控除の対象となるインボイスを適切に保管・管理しなければなりません。

これに伴い、経理業務のフローの見直しが必要になるケースもあります。請求書の受領から仕入税額控除の処理に至るまで、一連の流れを見直し、制度に準拠した経理体制の構築が求められます。

インボイス制度に関連する支援制度

インボイス制度への対応には、システム導入などのコスト負担が伴いますが、各種支援制度を活用することでその負担を軽減できます。ここでは、代表的な支援制度を紹介します。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者を対象としたIT導入補助金は、生産性向上を目的としたITツールの導入を支援する制度です。インボイス制度への対応を目的とした「インボイス対応類型」も設けられており、会計ソフトや受発注・決済システムの他、PC・タブレット・レジ・券売機などのハードウェア導入費用まで幅広く補助の対象となります。

補助率は用途によって異なり、例えば「50万円〜350万円の会計ソフトには3分の2」「10万円以内のPC・タブレットには2分の1」といった設定がされています。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、個人事業主など小規模事業者が経営計画を策定し、商工会や商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓などに対して、費用の一部を補助する制度です。税理士への相談費用なども補助対象に含まれ、幅広い支援が受けられます。

特に、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する場合は、補助上限額に50万円が加算される特例があり、インボイス登録に向けた準備費用についても手厚い支援が受けられます。

少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)

少額特例は、小規模事業者の事務負担を軽減するための制度です。この特例により、税抜1万円未満の課税仕入れについてはインボイスの保存が不要となり、帳簿への記載のみで仕入税額控除を受けられます。取引先がインボイス発行事業者かどうかに関係なく適用されるため、柔軟に活用できる点が大きなメリットです。

仕入税額控除の経過措置

インボイス制度の導入に伴い、免税事業者からの仕入れについても段階的に仕入税額控除を認める経過措置が設けられました。具体的な控除率は、以下の通りです。

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額の80%
  • 2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額の50%

ただし、控除を受けるには「区分記載請求書等」と同等の書類の保存が必要で、該当する仕入が経過措置の対象であることを帳簿に明記する必要があります。

インボイス制度に関するよくある質問

最後に、インボイス制度に関するよくある質問に回答します。

売上規模が小さい店舗でもインボイスに登録すべき?

少額特例や経過措置の適用により、免税事業者のままでも一定条件を満たせば、取引先が仕入税額控除を受けられる場合があります。そのため、インボイス登録は必須ではありません。

ただし、取引先との関係性によっては、登録していないことで取引が減少する可能性もあります。本記事の「インボイスに対応すべき?飲食店の判断ポイント」も参考に、自店舗にとって最適な対応を慎重に検討しましょう。

免税事業者のままインボイスを発行することはできる?

免税事業者のままでは、制度上インボイスを発行することはできません。インボイスを発行できるのは、登録された課税事業者に限られます。インボイスの発行を希望する場合は、たとえ売上が1,000万円以下であっても、課税事業者として登録して消費税の納税義務を負う必要があります。

まとめ:インボイスに対応するならPOSレジの活用がおすすめ

インボイス制度への対応には、税負担や事務作業の増加といったデメリットもありますが、法人顧客との取引機会の維持といったメリットも見逃せません。それぞれの店舗にとって何が最善かを見極め、今後の運営方針に沿った判断が求められます。

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