飲食店の経営において、お客様が少ない「アイドルタイム」をどう乗り越えるかは、多くの経営者が抱える共通の悩みです。「この時間帯だけ、どうしても売上が伸びない」「スタッフが手持ち無沙汰になっている」といった状況は、収益の機会損失だけでなく、人件費などの固定費が重くのしかかる原因にもなります。
しかし、アイドルタイムは工夫次第で「利益を生む時間」に変えられます。この記事では、アイドルタイムが引き起こす問題を整理した上で、具体的な集客のポイントから、時間を有効活用する方法までを徹底解説します。
目次
▼この記事のポイント
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 飲食店のアイドルタイムとは? | ランチとディナーの合間など、来客数が少なくなる時間帯のこと。店舗の業態や立地によって発生する時間帯は異なる。 |
| アイドルタイムが引き起こす問題は? |
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| アイドルタイムに集客するポイントは? |
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| アイドルタイムを有効活用する方法は? |
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飲食店のアイドルタイムとは?

飲食店のアイドルタイムとは、営業時間中のうち、来客数が少なくなるピークタイム以外の時間帯のことです。一般的には、ランチとディナーの合間である15時〜17時頃に発生しやすいとされています。
ただし、アイドルタイムが発生する具体的な時間帯は、店舗の業態や立地、客層によって異なります。
- カフェ・喫茶店:ランチ後の13時〜15時頃
- レストラン:ランチとディナーの間の15時〜17時頃
- 居酒屋:開店直後からお客様が増え始める19時頃まで
自店舗のアイドルタイムを正確に把握することが、効果的な対策を立てる上で重要です。
飲食店でのアイドルタイムが引き起こす問題とは?
お客様が少ないアイドルタイムは、単に売上が上がらないだけでなく、店舗経営において様々な問題を引き起こす可能性があります。具体的には、以下のような問題が挙げられます。
- アイドルコストの発生:売上がなくても固定費がかかり、赤字リスクが高まる
- 対応力の低下:スタッフの緊張感が緩み、突発的な来客への対応品質が落ちる
- 店舗イメージの悪化:活気のない様子が「人気のない店」という印象を与える
これらの問題は互いに関連し合っており、放置すると経営に深刻な影響を及ぼしかねません。それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
アイドルコストが発生する
アイドルタイム中に発生するコストは、「アイドルコスト」と呼ばれます。お客様が一人もいなくても、人件費や家賃といった固定費は常に発生し続けます。
そのため、売上が伸びない時間帯が長引くほど、店舗の利益は圧迫され、赤字のリスクが高まります。水道光熱費や消耗品費といった変動費を節約するだけでは、これらのコストをカバーするには限界があるでしょう。
突発的な来客時の対応力が低下する
アイドルタイムは、スタッフの緊張感が緩みがちな時間帯です。ピークタイムを乗り切った安心感から、店内清掃や次のピークに向けた準備作業がおろそかになることがあります。
こうした気の緩みは、突発的に来店されたお客様への対応品質の低下に繋がりかねません。迅速な案内や丁寧なサービスが提供できなければ、せっかくの来店機会を活かせず、顧客満足度を損なう原因となります。
「人気のない店」という印象を与える
お客様がいない状態が長く続くと、店の前を通りかかった人から「人気のない店」「流行っていない店」というネガティブな印象を持たれてしまう恐れがあります。
また、活気のない店内でスタッフ同士が私語に興じている様子は、お客様に居心地の悪さを感じさせ、満足度の低下を招きかねません。こうした事態を避けるためにも、アイドルタイムを有効に活用したり、お客様を呼び込んだりする工夫が不可欠です。
飲食店でアイドルタイムに集客をするポイントは?

アイドルタイムをただの「待ち時間」にしないためには、その時間帯に合わせた集客施策を積極的に行うことが重要です。ここでは、アイドルタイムの集客に効果的な6つのポイントをご紹介します。
- 利便性の高いサービスの提供
- 業態転換・限定サービスの提供
- イベントの実施
- SNSでの情報発信
- 店内POP・チラシの活用
- 地域イベントへの参加
キャッシュレス決済などお客様の利便性の高いサービスを提供する
アイドルタイムに来店がないのは、時間帯の問題だけではなく、お客様にとっての利便性が低いことが原因で機会損失を招いている可能性も考えられます。例えば、「現金を持ち合わせていないから」という理由で、入店をためらうお客様も少なくありません。
しかし、キャッシュレス決済を導入するなど、お客様の利便性を高める工夫をすれば、アイドルタイムでも気軽に来店してもらいやすくなります。
実際に、アルファノート株式会社の「飲食店利用者のキャッシュレス実態調査」(2024)では、飲食店の支払い方法のうち、キャッシュレス決済が約85%を占めるという結果が出ています。
また、TesTee Labの「キャッシュレス決済に関する調査」(2025)では、回答者の58.4%が「キャッシュレス決済の有無が店舗選びの決め手になる」と回答しており、消費者からのニーズは非常に高いことが分かります。こうした状況からも、飲食店にとってキャッシュレス決済への対応は、もはや不可欠と言えるでしょう。
出典:アルファノート株式会社
出典:TesTee Lab:https://lab.testee.co
時間帯に合わせた業態転換・サービスの提供をする
昼と夜で異なるメニューやサービスを展開し、時間帯ごとのターゲットに合わせたアプローチをするのも有効なアイデアです。立地や客層の特性を分析し、新たな需要を掘り起こしましょう。
- オフィス街の店舗の場合
17時〜19時の時間帯に、会社員をターゲットとしたドリンク割引などの「ハッピーアワー」を実施し、仕事帰りの一杯需要を取り込む - 住宅街の店舗の場合
日中の在宅者が多い主婦(主夫)層をターゲットに、優雅な午後のひと時を過ごせる「アフタヌーンティーセット」などを提供する
イベントを実施する
料理教室やワークショップといったイベントを開催し、新しい形で集客するのも一つの方法です。イベントは、普段は来店しない客層に店舗を知ってもらう絶好の機会となり、認知度向上に大きく貢献します。
イベントの企画には、以下のようなアイデアが考えられます。
- 地元アーティストのライブや作家の展示会を開催
文化的な活動の場を提供することで、地域コミュニティに貢献し、感度の高いお客様層にアピールできる - 料理教室やワインセミナーの開催
シェフの専門知識や技術を体験してもらうことで、店舗のファンを増やし、リピート来店に繋げられる
SNSによる情報発信を行う
SNSを活用して、アイドルタイム限定のキャンペーン情報などを継続的に発信することで、お客様の来店意欲を高めることができます。SNSでの情報発信には、以下のような方法があります。
- アイドルタイム限定メニューや割引キャンペーンの情報を、Instagramなどで魅力的な写真とともに投稿し、フォロワーの来店を促す
- LINE公式アカウントに友だち登録してくれたお客様に限定クーポンを配信し、再来店を効果的に働きかける
店内POPの作成やチラシの配布を行う
来店中のお客様や、店の前を通りかかる地域住民へのアピールも重要です。店内POPやチラシを活用して、アイドルタイムの魅力を伝え、認知度を高めましょう。
効果的な店内POP・チラシを作成するためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
- タイムセールを告知する
「15時〜17時限定!ドリンク全品100円引き」のように、時間と特典を明確に示し、お得感を演出する - 手書きで温かみを出す
手書きのメッセージやイラストを加えることで、チェーン店にはない親しみやすさを伝え、お客様の心を引きつける
地域イベントに参加する
地域の祭りやイベントに出店することも、店舗の認知度を高める上で非常に効果的です。店舗での営業が比較的落ち着いているアイドルタイムを活用し、積極的に地域活動へ参加しましょう。
イベント出店を通じて地域住民と直接交流することで、親近感を持ってもらい、店舗のイメージアップが期待できます。これがきっかけとなり、後日店舗へ足を運んでくれるお客様も増えるかもしれません。
飲食店でアイドルタイムを有効活用する方法は?

アイドルタイムは、集客だけでなく、次のピークタイムに向けた準備や、店舗運営の質を高めるための貴重な時間としても活用できます。ここでは、アイドルタイムを有効活用するための4つの方法を紹介します。
- 仕込みと清掃
- 従業員の教育
- レンタルスペースとしての貸し出
- 売上分析
仕込みと清掃で次のピーク時に備える
アイドルタイムは、次のピークタイムをスムーズに乗り切るための準備時間として最適です。計画的に作業を進めることで、ピーク時の業務負担を軽減し、お客様へのサービス品質の維持にも繋がります。
具体的には、以下のような作業を行いましょう。
- キッチンでの料理の下準備
食材のカットやソース作りなどを進めておくことで、ピーク時の調理時間を短縮できる - フロアやトイレの清掃
お客様が少ない時間帯に普段は行き届かない場所まで入念に清掃することで、清潔な環境を保つことができる - 備品の点検・補充
カトラリーや調味料、おしぼりなどを補充し、ピーク時に不足しないよう万全の状態を整える
従業員の教育を行う
スタッフの対応やサービスの品質は、お客様満足度を大きく左右します。お客様が少ないアイドルタイムは、従業員のスキルアップを図る絶好の機会となります。例えば、以下のような教育の時間を設けるのがおすすめです。
-
接客マナーや衛生管理の再教育
基本に立ち返り、店舗全体のサービスレベルを均一化することで、安定した店舗運営を実現できる -
新人スタッフへのマンツーマン指導
先輩スタッフが付きっきりで指導することで、新人の不安を解消し、早期の戦力化を促せる -
新メニューの試作・試食会
スタッフ全員で味や提供方法を確認することで、お客様に自信を持っておすすめできるようになる
レンタルスペースとして貸し出す
店舗の空いているスペースを、レンタルスペースとして時間貸しすることも、アイドルタイムを収益に変える有効な手段です。Wi-Fiや電源が完備されている店舗であれば、テレワークの需要が見込めます。その他にも、地域の会合やサークルの活動場所として提供することも有効です。
また、アイドルタイムに店舗を丸ごと貸し出し、別の事業者が飲食店などを営業する「間借り店舗」として活用する方法もあります。間借り店舗であれば、別の事業者が長期間にわたってレンタルするため、継続的な収益が期待できます。
こうした取り組みは、新たな収益源を確保できるだけでなく、普段とは異なる層に店舗を知ってもらうきっかけにも繋がります。
売上分析を行う
アイドルタイムは、日々の忙しさの中では後回しになりがちな、売上データの分析や経営戦略の立案に集中できる貴重な時間です。勘や経験だけに頼るのではなく、以下のように客観的なデータに基づいて現状を分析し、的確な施策を打ち出しましょう。
- 人気のないメニューや、逆によく出るメニューを売上データに基づいて把握し、メニュー構成を見直す
- 食材の廃棄ロスや過剰な仕入れがないかを記録に基づき確認し、仕入れ先や量を最適化する
POS レジを導入していれば、時間帯別や商品別の売上などを自動で集計・可視化できるため、効率的に分析を進められます。
飲食店のアイドルタイムを効果的に活用!POSレジで分析できることは?

POSレジを活用すれば、アイドルタイムを使って詳細なデータ分析を手軽に行えます。ここでは、POSレジでできる代表的な分析を3つ紹介します。
- 時間軸の分析
曜日や時間帯ごとの売上傾向を把握し、シフトや販促を最適化する - 商品分析(ABC分析)
商品の売れ筋を特定し、効果的なメニュー改善を行う - 客層の分析
客層を分析し、お客様層に合わせたメニュー開発やマーケティング施策を実施する
これらの分析を通じて、アイドルタイムの集客施策や店舗運営の改善に役立つ、具体的なヒントを得ることができます。
時間軸の分析
時間軸での分析とは、時間帯や曜日ごとの売上、客数、客単価などの推移を可視化する分析です。この分析により、店舗の繁閑の波を正確に予測でき、様々な施策に活かせます。
【分析できる内容】
- 時間帯別、曜日別の売上・客数・客単価の推移
- 繁忙期・閑散期の傾向
- 予算の達成状況
【分析からできること】
- 的確なシフト調整
繁閑に合わせてシフトを調整できるようになり、人件費を最適化できる - 効果的な販促
客数の少ない曜日や時間帯を狙ってセールを実施できるようになり、売上の底上げを図れる - 正確な仕入れ
正確な需要予測に基づき仕入れ量を調整でき、廃棄コストを削減できる
商品分析(ABC分析)

商品分析(ABC分析)とは、商品を売上への貢献度に応じて「A(主力商品)」「B(準主力商品)」「C(非主力商品)」などの区分で3ランクに分類し、メニュー戦略の最適化に役立てる分析手法です。
【分析できる内容】
- どの商品が主力(A商品)で、どの商品が非主力(C商品)か
【分析からできること】
- 売上の高い商品Aはコース料理に組み込んだり、セット販売にしたりすることで、さらに売上を伸ばせる
- 売上の低い商品Cは価格や内容を見直すか、思い切ってメニューから外すなどの判断ができる
客層の分析
客層での分析とは、来店するお客様の年齢層、性別、利用シーンといった属性を分析することです。どのようなお客様に支持されているかを把握することで、より的確なアプローチが可能になります。
【分析できる内容】
- 利用シーン(ランチ、ディナー、宴会など)別の来店状況
- 年齢層や性別ごとの利用傾向
【分析からできること】
- ターゲットに響くメニュー開発:若者層が多いならSNS映えするメニューを、ファミリー層が多いならお子様向けメニューを開発するなど、客層に合わせた商品開発ができる
- 的確な集客施策の実施:リピーターが少ないなら常連客限定の裏メニューを案内し、新規お客様が少ないなら初回限定クーポンをSNSで配布するなどの施策を実施できる
飲食店のアイドルタイムの有効活用・業務効率化なら、USEN!

USENでは、飲食店のアイドルタイム活用や業務効率化に貢献する、様々なソリューションを提供しています。
また、USENではIT導入補助金の申請サポートも行っており、POSレジなど対象のサービスでは、中小企業の場合は最大で導入費用の「3/4」、小規模事業者の場合は最大「4/5」の補助が適用される可能性があります。
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- 配席から注文、会計処理までの一連の業務をスムーズにし、省人化を実現。スタッフの負担を軽減し、接客品質の向上ができる
- レジ操作の履歴管理や権限設定で内部不正を防止。365日対応の電話サポートなどがあり、導入後も安心して利用できる
- キャッシュレス決済やオーダーシステム、予約システムなど、様々な外部サービスと連携できる
これらの機能により、業務効率化はもちろん、売上向上にも大きく貢献します。サービスの詳細については、こちらの動画・サービスサイトをご覧ください。
集客拡大に効果的!キャッシュレス決済サービス「USEN PAYシリーズ」
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名物の野菜巻き串が人気の『博多うずまき 新潟駅前店』様では、多店舗展開における売上管理の課題を解決するため、USENレジを導入しました。以前は店舗ごとにしか売上を確認できず管理が煩雑でしたが、USENレジによって本部で全店舗の売上を一元管理できるようになりました。
特に、USENレジの高度な分析機能は、経営と現場の両方に大きな効果をもたらしています。本部では、ABC分析を始めとする各店舗のデータを瞬時に把握できます。その結果から「ハッピーアワーで売上を伸ばそう」「営業時間を延長しよう」といった具体的な販促戦略を迅速に立案できるようになりました。
一方、店舗では、売上目標の達成状況がリアルタイムで「見える化」されたことで、スタッフのモチベーションが向上。「目標達成のためにどう動くべきか」を一人ひとりが考え、主体的な接客に取り組むきっかけになっています。
USENレジの分析機能は、経営層の迅速な意思決定をサポートするだけでなく、現場スタッフの意識改革にも繋がり、店舗全体の活性化に貢献しています。

