2019年9月10日
八重洲地下街株式会社 保安部様
訪日外国人の来客が増えているなら「避難訓練」も多言語対応がマスト
訪日外客数は年々増加しています。ショッピングセンターや飲食店など、様々な場所で訪日外国人を受け入れる環境整備が進められていますが、忘れてはいけないのが万が一の時のインバウンド対応です。
八重洲地下街株式会社が運営する「八重洲地下街」は、日本人スタッフだけで外国語放送が流せるUSEN-NEXT GROUPの株式会社 USENが提供する、最新の多言語支援システム「USENおもてなしキャスト アナウンスアプリ防災」(以下、おもてなしキャスト)を導入しています。
同地下街では、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催前としては最後の防災訓練を9月2日(防災の日の翌日)に実施し、訓練としては初の試みとなる外国語放送による災害情報の伝達や避難誘導を行いました。
今回は、地下街として初の導入となった八重洲地下街の担当者に、導入経緯や導入後の感想についてインタビューしました。
目次
八重洲地下街とは?
八重洲地下街は、1965年(昭和40年)に開業し、現在テナント数は約180、その敷地面積は東京ドーム1.5倍の規模を誇る国内有数の地下街です。東京駅周辺で、最も日常使いしやすい商業施設の一つとして認知されており、メインターゲット層は近隣オフィスで勤務する方々です。
1日の通行量は約15万人、今では訪日外国人も多く、案内所への問合わせにおける外国人比率は11.2%(2019年8月度)となっています。
地下街での非難訓練、外国人への対応を開始
八重洲地下街全体での「総合防災訓練」は年1回、防災の日に実施しています。またそれ以外にも、3月と11月の年2回、火災対応訓練を行い地下街全体で防災意識を高めています。
過去の総合防災訓練における外国人対応は、指差しボードを使用した一対一でのコミュニケーションまでは実施してきましたが、防災センターに外国語を話せる人がいないため施設全体の非常放送は実施していませんでした。
2019年の総合防災訓練では「おもてなしキャスト」を導入し、これにより初めて防災放送の多言語化が実現し、日本語に加えて英語、中国語、韓国語の4言語による総合防災訓練を実施することができました。
外国語放送(多言語アナウンス)アプリの導入経緯
八重洲地下街はもともと、多くの外国人客に利用いただいていたことから、インバウンド対策の一環として非常放送の外国語対応も充実させたいと考えていました。
検討を進める中で多言語が流せるメガホンを検討した時期もありましたが、メガホンでは目の前の限られた方々への放送はできますが、全館放送はできないこと、導入コストの問題もあり、施設全体の放送として使用できるサービスを探しているタイミングで「おもてなしキャスト」を紹介いただき、導入を決定したそうです。
導入のポイントと、使ってみて良かった点
八重洲地下街で「おもてなしキャスト」を選んだ理由は、以下の5つに集約されます。
- 1.全館放送として使える
- 2.予め非常放送で使える防災アナウンスのコンテンツが標準で搭載されており、追加コンテンツ(コスト)が少なくて済む
- 3.タブレットの大きな画面で使いやすく、誤操作しにくい
- 4.訓練で使うコンテンツはアプリの機能で事前に準備できる
- 5.非常放送ラックに場所を取らずに設置できる
今後、追加したいフレーズも
八重洲地下街では、「おもてなしキャスト」を利用してみて、今後追加したいと考えるフレーズにも思い至ったと言います。
標準搭載されているアナウンスのフレーズでも対応できるのですが、地下街なので避難先として「最寄りの階段」のフレーズ、また「テロ」や「不審物」、「通行規制」などのアナウンスを追加したいと考えているそうです。
ただし、これらはそのまま放送するとパニックを誘発する可能性があるので、適切な言い回しへ転換するといった配慮が必要だと考えています。
防災訓練を担当する保安部の石川部長は、「こうした場合に、アプリサービスなので機器の入替もなく、こちらの任意で追加ができるのも助かります。他には、緊急地震速報チャイムや地震の擬音をICレコーダーに入れて非常放送マイクで流していますが、そういった音源も流せるようになるとさらに使いやすいと思います。」と、サービスに対する評価とこの先の構想について回答くださっています。
※緊急地震速報チャイムは、※2019年冬にアップデートで標準搭載(予定)
実際に利用・操作した印象は?操作のしやすさを評価
手に取って操作することで気づいたことについてもお尋ねしてみました。
「万が一の際に利用するサービスなので操作する画面サイズや文字の大きさは非常に重要です。
緊急時は手元が震えることもありスマホ程度の画面では押し間違えや見づらさなどの不安があります。今回導入したiPad miniサイズがちょうど良いと思っています。放送ラックの空きスペースにもぴったりと収まります。
また、防災センターの職員は年配の者も多く、細かい設定はできません。普段そんなに触る機器ではないのですぐに簡単に使えることがとても重要です。
緊急時には、端的に伝えるワンフレーズの重要性が高くなります。おもてなしキャストでは、各アナウンスの『選択肢』として、多くの情報を放送するか、短く端的に伝えるかを選べるので使いやすいと思います。」
(八重洲地下街株式会社 保安部 石川部長)
総合防災訓練で利用してみた感想や意見
最後に、「おもてなしキャスト」のサービスは総合的にどのように評価されるかご意見をお聞かせいただきました。
「良かったと思う点は震度が伝えられること、訓練の開始や終了案内など訓練の前後にも外国語で放送ができること、放送する言語を選べることなどです。
マイク放送(肉声)の場合は、人によって早口になったり声が震えたりしますが、おもてなしキャストの音声なら安定した声で放送ができます。声が安定した放送なら、日本人はもちろん外国人のお客様にも安心してもらえるし、これまで以上に伝わると思います。
他には、火事、地震、テロなど短いワードを多言語で伝えられること。また日本語を含めて、同じ波長(トーン)で伝えることができることは良い点だと思います。」
思ってもみなかったことが起きるのが災害です。訪日外国人が増える今、施設の利用者の安全を言語面からサポートして確保する「おもてなしキャスト」の重要性は今後高まっていくと考えられます。また、外国語人材も重要ですが、人頼みのオペレーションでは万が一の事態で不在の可能性もあり、体制としての脆弱性は排除しきれません。
ぜひ今回の導入事例を参考に、災害時の外国人対応について、なんらかのツール導入を検討されることをおすすめします。
USEN SOUND Lab.編集部