Study 研究
公開日: 2026.06.01
更新日: 2026.06.02
子どもが食事を楽しく感じられる音楽
昭和女子大学の池上真平先生、野嵜茉莉先生と検証した、お子さんの食事時におすすめの音楽です。
「毎日の食事をもっと楽しい時間にしたい」「子どもたちに食べる喜びを育んでほしい」という想いは、多くの保護者や保育現場が大切にしている願いです。USENは、そんな「食育」を音楽の力でより素敵なものにできないかと考え、昭和女子大学の池上真平先生、野嵜茉莉先生と共同研究を実施しました。
BGMが幼児の食事中の行動に及ぼす影響や、音楽の要素の違いによる反応を明らかにするため、「音楽による食事環境の質向上」を目指して検証を行った結果、音楽が子どもたちの「食べる意欲」を自然に引き出し、食事量を増加させる可能性が示されました。
研究および実験概要
予備調査として、保育士や幼稚園教諭、栄養士200名を対象に、子どもに食べさせたい食材や人気の食材、食事の場面における課題などを調査しました。その結果をもとに、同一の歌詞を用いつつ、食事の時間を活気づける「覚醒的な楽曲」と、落ち着いて食事をしてもらえるような「沈静的な楽曲」という、曲調の異なる2種類の子ども向け楽曲を制作しました。
制作した曲を用いて、3~6歳の未就学児50名を対象に実験を実施しました。参加者は保護者とともに待機場所でしばらく場慣れしてもらった後、4~8名の集団で音楽を聴きながら軽食を取ってもらい、その際の食事の量や様子を記録、分析を行いました。それぞれの群ごとに音楽条件の順番は入れ替えて実施しました。
結果
音楽がない条件よりも、音楽がある条件の方が、1分当たりの摂食量が有意(※)に多くなりました。特に、最初に「覚醒的な楽曲」を流した場合に、子どもたちの食べる意欲が高まり、その後に曲調が変わっても高い摂食量が維持されました。この時、食べ物を「かじる」行動には条件による違いが見られなかったため、食事ペースを無理に早めるのではなく、音楽が子どもたちの自発的な意欲を維持することで、安定した食事の進行をサポートできる可能性が示されました。
※有意・・・統計的に有意である(偶然ではなく、実際の効果によって生じたものと結論づけられる)ことを表しています。
さらに、「鎮静的な楽曲」を流している間は、子どもたちからのポジティブな発話が多くなることも確認されました。
これらの研究結果から、幼児の食事環境においては、食べる意欲を引き出す「覚醒的な要素」と、楽しいコミュニケーションを育む「鎮静的な要素」の使い分けやバランスが重要であることが明らかになりました。
USENではこの知見を活かし、食への意欲を自然に促しつつ、食卓での和やかな会話も楽しめる「ほどよく覚醒的で心地よい」子ども向けオリジナル楽曲を制作しました。また、楽曲には食べ物への興味や関心を育むことを目的とした歌詞を取り入れています。USENは今後も、音楽の力で子どもたちの健やかな「食育」をサポートしてまいります。
<共同研究:昭和女子大学 人間社会学部 心理学科 池上真平准教授・野嵜茉莉准教授>
キーワード:幼児・子ども・食事・保育・BGMの有無
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子どもの食事のための音楽
昭和女子大学の池上真平先生と野嵜茉莉先生との共同研究をもとに制作した、USENオリジナル曲による番組です。「他者と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」という食育の観点に基づき、食べる意欲とポジティブなコミュニケーションを引き出す、ほどよく覚醒的で心地よい楽曲に仕上げました。食に関する学びを得ながら幼児が楽しく食事ができる、保育現場やご家庭の食事の時間におすすめのチャンネルです。
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研究者からのコメント
子どもたちにとって食事は、他者と交流しながら食への関心や楽しみを育む絶好の機会といえます。今回、子どもたちの食事場面をより豊かにしうる要因として音楽に注目しました。というのも、音楽が人々の食事行動に様々な影響を与えることは、色々な研究で報告されてきたからです。一方で、そうした研究のほとんどは大人を対象とした研究だったため、幼児の食事に音楽がどのような影響を与えるのかは、十分に実証されていませんでした。そのため、新たに実験を行って検証しました。
実験では、園でのお昼ご飯に近い場面を用意し、時折音楽を流しながらお子さんたちにサンドイッチを食べてもらいました。ちなみにこの音楽は、食べ物について歌われており、今回新たに制作されたものです。サンドイッチの摂食量や食事中のお子さん達の行動を分析した結果、音楽が流れている間は、音楽が流れていない間よりもお子さんたちはより多くのサンドイッチを食べました。言い換えれば食が進んだのです。より詳しく分析すると、特に覚醒的な(より活発な雰囲気の)曲調の音楽の方が、その後の摂食量を押し上げるような効果に優れるらしいことが示唆されました。一方で沈静的な(より落ち着いた雰囲気の)曲調の音楽を聴いている時には、お子さんたちはポジティブな発言がより多くなり、社交を促す効果がみられました。
幼い子どもたちの食事中に音楽をかけることは必ずしも一般的ではないかもしれませんが、曲調による影響の仕方の違いを理解した上で音楽をうまく活用できれば、子どもたちの食事時間をより充実したものにできるのではないかと考えています。
昭和女子大学 人間社会学部 心理学科
池上真平准教授
博士(心理学)。2014年青山学院大学教育人間科学部助手、2017年同助教を経て、2019年昭和女子大学心理学科に着任。日本音楽知覚認知学会理事。昭和女子大学生活心理研究所所員。専門は音楽心理学、認知心理学、実験心理学。人の感性を支える心の働きに関心を持っており、音楽が行動・感情・意志決定などに及ぼす影響やその心的プロセス等の研究をおこなっている。
野嵜茉莉准教授
博士(学術)。日本学術振興会特別研究員、弘前大学教育学部講師を経て、2021年昭和女子大学心理学科に着任。昭和女子大学生活心理研究所・女性文化研究所所員。専門は発達心理学。子どもが誰とどのように関わりながら心を発達させていくのかに関心を持ち、研究をおこなっている。