公開日:2020年3月9日 | 更新日:2023年5月17日
オフィスBGMが社員間コミュニケーションに及ぼす効果
BGMでチーム力を高めるオフィスづくりを
社員間コミュニケーションは、社員がアイデアのインスピレーションを得たり、労働の生産性を高めたり、働く上での満足度を感じたりするうえで、極めて重要な要因と考えられています。しかしながら、世代や役職等の違いに加え、パーソナルなコミュニケーションデバイスの普及によって、社員間コミュニケーションの促進は、以前にも増して企業にとって難しい問題となってきているのが現状です。
働き方改革が進むなか、オフィスの環境づくりの一環としてBGMを活用する企業も増えてきましたが、今回私たちはBGMが社員間コミュニケーションに及ぼす影響を探るために、早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所の恩藏直人教授、平木いくみ教授、權純鎬助手と共に実験を行いました。
実験概要
実験は、大手オフィス系企業のご協力を得て、1ヶ月の間、入り口からオフィスフロアに至る全館において、始業時間から終業時間までBGM(S-01「Concentration ~働く人の集中力UP~」)を流し続けるという形で行いました。その際、BGMを流した期間とその前後期間(BGMなし期間)の合計3期間において、社内のイントラネットを利用したアンケート調査を実施し、社員の心理状態やコミュニケーション状況の変化を測定しました。分析対象は、会議や外回りが少なくオフィス内で固定席に座っている時間が長い20〜60代の社員261人(男性115人、女性146人)でした。
結果
まず、BGM期間とその前後期間(BGMなし)における社員の感情状態を比較しました。快楽度(気分の心地よさ)と覚醒水準(テンションの高さ)を7段階(1〜7)で測定したところ、今回流したBGMは、社員の感情状態を大きく変化させるほど、大きな影響を与えていないことが示されました(BGMあり期間となし期間において、統計的な有意差は見られませんでした)。
他方、社員間コミュニケーションについて、上司—部下といった垂直関係と同僚間といった水平関係に分けて、両条件のコミュニケーションに対する満足度を聞いたところ、垂直関係においてのみ、統計的に有意な結果が示されました。具体的には、BGMあり期間となし期間において、同僚間ではコミュニケーション満足度に大きな変化は見られませんでしたが、上司—部下間では、BGMあり期間とBGMなし期間において、BGMなし期間よりも、有意にコミュニケーション満足度が高まることが明らかにされました。
現在、研究チームでは、BGMが垂直コミュニケーションの満足度を高めるメカニズムを解明すべく実験を進めています。それによると、オフィスBGMは、心理的距離が遠い社員とのコミュニケーションを図ろうとする意識を高める効果があることがわかってきました。オフィスBGMは、上司—部下間のコミュニケーション促進を望む企業において、有意義な施策となる可能性を秘めているといえるでしょう。
共同研究メンバー
早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所
恩藏直人教授
早稲田大学商学学術院教授。早稲田大学商学部卒業後、同大学院商学研究科へ進学。博士(商学)。専門は、マーケティング戦略。著書には『コモディティ化市場のマーケティング論理』、『コトラーのマーケティング4.0』(監修)、『マーケティングに強くなる』など。
平木いくみ教授
東京国際大学商学部教授。早稲田大学商学部卒業後、金融機関勤務を経て、同大学院商学研究科へ進学。修士(商学)。専門は消費者行動、マーケティング。著書には『消費者心理学』(共著)、『感覚マーケティング』(共訳)など。
權純鎬助手
早稲田大学商学学術院助手。青山学院大学経営学部を卒業後、早稲田大学大学院商学研究科修士課程を修了。現在、同大学大学院商学研究科博士後期課程に在籍。修士(商学)。専門は、マーケティング・コミュニケーション、消費者行動。
おすすめ番組
Concentration ~働く人の集中力UP~
埼玉医科大学短期大学 和合治久名誉教授監修、作曲家/ピアニストの中村由利子がオフィスにふさわしい曲調と音色で作曲・演奏するUSENオリジナル・チャンネル。高い周波数の音と明るくシンプルな短い旋律の繰り返し、心地よい和音を用いた楽曲が脳と身体の疲れを癒やし、次のステップで集中力を高めて仕事の生産性を向上させることが期待できます。
※本研究は株式会社カインズ様にご協力いただきました。
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・本ページの実験結果は、各種実験業務の委託により得た分析結果を記載したものです。当社並びに当該分析結果は、何らかの効果を保証しているものではありません。
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※本番組は2020年3月現在のものです。