公開日:2024年12月9日
介護施設におけるBGMの効果の研究
介護施設で一日を過ごす高齢者とスタッフに寄り添う音楽とは
近年の日本では、社会の高齢化が叫ばれて久しく、それに伴い介護市場は拡大しています。高齢者への居宅に訪問するタイプのものや、施設への通所、宿泊、あるいは入居するタイプのものなど多様な介護サービスが展開されています。
そのような背景で、USENは「高齢者が一日を過ごす介護施設において音楽がもたらす効果」について医療法人光ヶ丘病院 新藤悠子先生(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室非常勤講師)との共同研究で検証実験を行いました。
実験概要
デイケア利用者が施設に到着してから帰宅するまで、一日のなかで様々なBGMを流しました。
1週間ごとにBGMプログラムを変え、4つの期間においてデイケア利用者35名(76±7.55才)、施設に勤務するスタッフ16名(41±1.7才)に対し、体調や気分などをたずねるアンケート調査を実施しました。
結果 -1- <利用者> 痛みの感じやすさ(疼痛)
リハビリテーションの時間の「痛みの感じやすさ」は、期間BとCに放送した「活気のあるラウンジ・ミュージック」の方が、期間AとDに放送した「穏やかなクラシック・ピアノ」に比べて、無音期間との差分を比較すると、有意に軽減されました。(*p<0.05)
結果 -2- <利用者> 曲の好み
昼食時間のBGMは、期間AとC「演歌のインストゥルメンタルカバー」が有意に好まれました。(*p<0.05)
高齢者にとっては馴染み深いメロディが喜ばれたのかもしれません。
結果 -3- <スタッフ> 午前の気分
施設で働くスタッフの午前中の気分は、無音期間よりもBGMが流れている期間のほうが有意に上がりました。 (*p<0.05)
音楽の種類を問わず全てのBGMで効果が見られ、BGMは働く人にもポジティブな影響を与えることが期待できると考えられます。
監修者からのコメント
<監修>医療法人光ヶ丘病院 リハビリテーション科部長 新藤悠子
BGMには、リラックス、集中、意欲向上、リフレッシュなど様々な効果があると言われています。
今回、通所リハビリテーションの1日の中の様々な場面でBGMを流し、場面ごとの効果を検討しました。リハビリ訓練の場面では、快活なBGMが疼痛に効果がある可能性が示されましたが、静かなBGMでは逆効果の可能性もあり、音楽の種類によって効果が異なる可能性が示唆されました。同時に、BGMの職員の仕事に対する意欲などへの効果も検討したところ、無音期間と比べて、どのBGMでも気分向上が認められるという結果となり、働く若い層にはBGMの効果が高い可能性が示されました。
音楽の効果は、好みによることも大きいと思われ、共有のスピーカーからのBGMでは、限界があり、ヘッドホンなどで好みにあったBGMを提供できれば、より効果が上がる可能性も考えられます。また、場面ごとに異なるBGMを導入することで、高齢者の生活のリズムを作り、認知機能の維持・改善や意欲向上などに繋がる可能性もあると考えられます。今後さらに長期的なBGMの効果も検討していきたいと思います。
(謝辞:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 音楽神経科学 藤井進也研究室)
<プロフィール>
リハビリテーション科専門医。医学博士。富山大学医学部医学科(旧富山医科薬科大学)卒。在学中にニューヨークに留学。2002年慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室に入局。2012-14年デンマークMRI研究所(DRCMR)に留学。2020年4月〜現職。音楽・アート・農など心のケアにも力を入れている。
※本研究成果の一部は2023年8月に「The 17 th International Conference on Music Perception and Cognition」で「Effects of Background Music on Moods and Feelings of Users and Staff in Senior Day Care」 (Saki Homma, et al. )のタイトルで発表しました。
※本研究は、デイケア光ヶ丘の利用者様およびスタッフの皆様にご協力いただきました。
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