公開日:2024年7月10日
BGMが集中度に与える効果
仕事や勉強、作業におすすめの集中力向上が期待できるBGMとは
仕事や勉強の際、音楽を聴いている方は少なくないと思います。最近ではオフィス内でBGMが流れている企業も増えています。(※)
しかし、BGMを流すと「気になって集中できない」というイメージを持っていませんか? USENでは、BGMの歌詞の有無や歌詞の言語の違いが集中度に与える影響について、昭和女子大学 池上真平先生監修のもと、検証を行いました。その結果、BGMが無い状態よりも、特定の条件を満たすBGMを流す方がパフォーマンスが高くなる可能性が示されました。
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実験概要
20~50代の日本語を母語とするオフィス就労者(営業・事務職)の男女52名を4群に分け、はじめに「何かに興奮していると、集中するのが難しい」「周りに雑音があると、難しい作業に集中できない」などといった注意制御に関する主観評価に回答してもらった後、9つのBGM条件の中で記憶・計算課題に取り組んでもらいました。各条件の最後には作業やBGMの印象についてアンケートに回答してもらいました。
9つの条件は下表の通りです。大きく5カテゴリに集約でき、アルファベットのA,Bは原曲が同じであることを示しています。全てのBGMをボサノヴァ調のリズムで揃え、群ごとに条件の順番をランダムに入れ替えて実施しました。
結果 -1- 計算課題
歌詞無し未知曲条件は、音楽無しを含めたどの条件よりも計算課題の解答数・正答数が有意に高くなり、馴染みの薄いインストゥルメンタル楽曲をBGMとして用いることで計算パフォーマンスが高まる可能性が示されました。
※有意・・・統計的に有意である(偶然ではなく、実際の効果によって生じたものと結論づけられる)ことを表しています。
結果 -2- 記憶課題
注意制御に関する主観評価をもとに、参加者を集中しやすい人(集中困難低群)と集中しにくい人(集中困難高群)に分けて分析しました。記憶パフォーマンスにおいては集中困難低群は歌詞無し未知曲のほうが他の楽曲よりも、再生語数・正再生語数ともに有意に高くなりました。逆に、集中困難高群は日本語親近曲では正再生語数が有意に低くなることが示されました。
結果 -3- 作業に対する印象
「いらいらした」「不快だった」「集中しにくい」などのネガティヴ印象と、「生き生きしていた」「楽しかった」「快適」「集中して作業できる」などのポジティヴ印象に分けて分析を行いました。
歌詞無し未知曲はネガティヴな印象の値が有意に低く、ポジティヴな印象の値が有意に高くなりました。
今回の研究の結果から以下のことがわかりました。
・計算や記憶の知的作業を行う場合、BGMによってパフォーマンスや作業の感じ方が異なる。
・馴染みのある日本語曲は作業がネガティヴな印象になり、集中しにくい人のパフォーマンスを落とす。
・音楽無しより、馴染みの薄いインストゥルメンタル楽曲を流す方が計算パフォーマンスを高め、作業の印象をポジティヴにする。
・馴染みの薄いインストゥルメンタル楽曲を流す方が他の楽曲を流すよりも、集中しやすい人の記憶パフォーマンスを高める。
計算や記憶課題を行う時のBGMには、馴染みの薄いインストゥルメンタル楽曲が適していると考えられます。
監修者からのコメント
<監修>昭和女子大学 人間社会学部 心理学科 博士(心理学) 池上真平 准教授
今回、「BGMが計算や記憶の作業に及ぼす影響は、歌詞の有無や言語により異なる」という仮説を立てて実験しました。結果はその通りになりました。具体的には、総じて馴染みのある日本語曲は作業成績が低く、作業に対する印象もネガティヴになりました。これは、歌の言語情報に注意が削がれてしまうためと考えられます。一方、馴染みのない歌詞無し曲の場合には、ポジティヴな影響がみられました。これは言語情報に注意を削がれず、むしろ音楽が持つ感情を整える力の恩恵を受けることができたためと考えられます。今回の得られた知見をもとに、頭を使う作業を行う場面での音環境作りに役立てていただければと思います。
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