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公開日:2024年6月11日
新しい閉店音楽の研究
「また買い物に来たい」と思うお店の閉店時間のBGMとは
従来、店舗では閉店時間をお知らせする音楽として「蛍の光(別れのワルツ)」が広く使われてきましたが、さりげなく閉店時間であることを伝えながらも、快くお帰りいただけるような新しい閉店音楽を制作出来ないかと考え、早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所と共同研究を行いました。
研究および調査概要
予備調査として、一般男女150名を対象に数種類の音楽を聴かせ、閉店音楽としての「ふさわしさ」と、その音楽から想起する印象語を調査しました。結果、閉店音楽としてふさわしい楽曲は「郷愁」「自然」「美しい」「落ち着く」「静か」といった印象を感じさせることが明らかになりました。
次に、小売店の店舗スタッフ657名を対象に、予備調査で閉店時間にふさわしいと評価された音楽の妥当性を確かめる調査を行いました。そして、ここまでの調査で特定された音楽の特徴を取り入れた新しい閉店音楽=「Good Day ~閉店の音楽~」を制作しました。最後に、この曲を複数の小売店で実際に放送し、お客様に与える印象について出口調査で確認しました。
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出口調査詳細
小売店9店舗をA群、B群に分け、B群でのみ閉店5分前から新しい閉店音楽を放送しました。それぞれの店舗で閉店5分前以降にレジに並んだお客様(合計102名)を対象に、買い物後にアンケートで閉店音楽としてのふさわしさや印象、好ましさなどを7段階で尋ねました。なお、A群は閉店まで営業中と同じBGMを流し続けました。
結果 -1-
B群の方が、A群よりもBGMに対して「閉店にふさわしい」「郷愁を感じる」「好ましい」という項目が有意※に高くなることが示されました。
※有意・・・統計的に有意である(偶然ではなく調査結果に意味が認められる)ことを表しています。
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結果 -2-
また、新しい閉店音楽は「閉店時間の音楽にふさわしく」、「店舗の評価を高め」、「顧客満足度や再来店意向を高める」可能性があることも明らかになりました。
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【注1】
パス(矢印)の上にある数値は影響の度合いを意味している。絶対値が影響の大きさ、符号(+/-)が影響の向き(正/負の影響)、数値右上の ** が統計的に有意な影響であることをそれぞれ表している。
【注2】
上下2段に数値があるパスは上段が満足度、下段が再来店意向への影響を表している。
【測定項目】
・閉店音楽としての評価(3項目):閉店時間の音楽にふさわしい/郷愁を感じる/好ましい
・買い物のしやすさ(2項目):テキパキと買い物することができた/買い物しやすい
・好ましい感情(2項目):あたたかい気持ちになる/懐かしい感じがする
・店舗評価(2項目):雰囲気が良い/好ましい
・満足度(1項目):満足のいく買い物ができた
・再来店意向(1項目):また買い物に来たい
共同研究者からのコメント
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早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所
恩藏直人教授、平木いくみ教授、須永努教授
近年、マーケティングではセンサリーという視点が注目されています。これは、音楽や香りなど五感を刺激することにより、消費者に意識させることなく何らかの行動を引き起こそうとするものです。今回の共同研究では、店舗の閉店時の音楽に注目しました。閉店時間であることをお客様にお知らせしますが、強制的であるという印象を与えず、店舗への満足度を損なわない、さらには、再び来店したいと思ってもらえるような音楽はないか、といった問題意識が出発点になっています。
いくつかの調査と分析を経て、狙い通りの曲に仕上がりました。今後は、出来上がった曲を実際の店舗で流すことにより、閉店時におけるお客様の行動や、その後の来店にどのような変化が生じるのかを追跡していきたいと思います。
※本研究は、株式会社大創産業の皆様、および『DAISO』の一部店舗にご協力いただきました。
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Good Day ~閉店の音楽~
研究によって得られた、閉店のイメージを持つ音楽の特徴を基に制作したUSENオリジナル曲による番組です。「郷愁感」をキーワードに小編成のオーケストラでゆったりとした曲調に仕上げています。お客様にさりげなく閉店時間であることを伝えながらも、快くお帰りいただけるような雰囲気を演出する、小売店や商業施設におすすめのBGMです。
【免責事項】
・本ページの実験結果は、各種実験業務の委託により得た分析結果を記載したものです。当社並びに当該分析結果は、何らかの効果を保証しているものではありません。
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