Study 研究

公開日: 2025.03.17
更新日: 2025.03.17
無人受付でのBGMが来訪者に与える影響
BGMが来訪者の心理や企業の第一印象にもたらす効果を早稲田大学の田辺新一先生と研究しました。
近年、オフィスの受付を無人化する企業が増えています。受話器やタブレット端末を設置するだけで済むため人件費の削減などのメリットがありますが、無機質な空間になりやすく、来訪者にとってはコミュニケーションをとる相手もいないため待機時の不安感が引き起こされると考えられます。
USENでは、無人受付でBGMを流すことにより企業の印象や来訪者の心理にポジティブな影響を与えることができないかと考え、早稲田大学 田辺新一先生の研究チームと共に検証を行いました。
その結果、BGMが流れる無人受付では、来訪者のネガティブな感情を低減することや、企業に対して「親しみやすさ」や「明るさ」といった印象が向上することが明らかになりました。
実験概要
20~30代の営業職に関わる男女77名(男性39名、女性38名)を対象に実験を行いました。参加者には無人受付を1人で訪ねて電話をかけてもらい、スタッフの指示のもと3分間座って待機した後、参加者自身の気分や企業の印象などを尋ねるアンケートに回答してもらいました。その際、無人受付の音条件は、無音/ヒーリングギター/ジャズ/クラシックの4条件の中から1条件を割り当てました。
結果 -1- 受付来訪者の心理
参加者自身の気分を尋ねる項目に4段階で回答してもらったところ、BGMがある時は無音の時に比べて「ふきげんだ」「腹が立つ」などの<怒り>が有意に低減し、逆に「生き生きしている」「陽気な気分だ」などの<活気>は向上する傾向が見られました。
※有意・・・統計的に有意である(偶然ではなく、実際の効果によって生じたものと結論づけられる)ことを表しています。
結果 -2- 企業の印象
企業の印象を尋ねる項目に7段階で回答してもらったところ、BGMがある時は無音の時に比べて「親しみやすさ」「明るさ」「好印象」が有意に向上する結果が示されました。
また、上記の結果をBGMの種類ごとに分けてみると、ギターは「親しみやすさ」を、ジャズは「お洒落さ」を、クラシックは「重厚感」を…というように、参加者に与える企業の印象の傾向がそれぞれ異なりました。
結果 -3- BGMの印象
BGMの印象について様々な形容詞の項目に7段階で回答してもらったところ、ジャズはギターに比べて「明るい」「陽気な」などの<高揚>が有意に高く、クラシックはギターとジャズに比べて「崇高な」「厳粛な」などの<荘重>が有意に高いという結果が得られました。これらの違いが企業の印象などに異なる影響を与えたと考えられます。
<共同研究:早稲田大学 創造理工学部 建築学科 田辺新一教授>
キーワード:オフィス・無人受付・企業の印象・BGMの有無・BGMの選び方
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【免責事項】
・本ページの実験結果は、各種実験業務の委託により得た分析結果を記載したものです。
当社並びに当該分析結果は、何らかの効果を保証しているものではありません。
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研究者からのコメント
最近、会社や法人などを訪問する際、受付に電話が「ぽつん」と置かれていることがよくあります。担当の方に電話をかけて、連絡をするのですが、昔のように直接ドアを開けて声をかけることができなくなっています。セキュリティーの観点から仕方がないことかも知れませんが、受付周辺の雰囲気が事務的で冷たく感じることがあります。こうした受付の対応が、会社や法人の第一印象に影響するなと感じていました。USENから共同研究の依頼を受けて、確かに電話をかけて待つ間にその会社に合った音楽が流れていたら、印象が大きく変わるのではないかと思いました。今回、男女77名を対象に被験者実験を行いました。普段感じていた「ふきげんだ」「腹が立つ」などの<怒り>が有意に低減し、逆に「生き生きしている」「陽気な気分だ」などの<活気>が向上するというエビデンスを得ることができました。来訪者にこのような優しい対応をする会社は素敵だと記憶されるでしょう。
早稲田大学 創造理工学部 建築学科 田辺新一教授
建築環境学が専門。快適性・健康性とエネルギーの関係に興味を持つ。早稲田大学大学院修了、工学博士。
第57代日本建築学会会長(2021~2023年)、サステナブル建築協会会長など