Research 調査

公開日: 2026.11.04

更新日: 2026.11.04

教育施設におけるBGM・映像導入に関する調査

中学生・高校生・教職員・事務職員を対象に調査を行いました。

 

学校内には、教室やグラウンドの他に保健室や事務室、職員室など、役割の異なる様々な空間が存在します。それぞれの場所において、利用者が心地よく過ごし、学習や校務などさまざまな活動に前向きに取り組める環境を整えることは、より良い学校づくりの大切な要素の一つといえます。今回は、国内中高一貫校の協力のもと、校内の一部エリアにBGM(音楽)と映像をテスト導入し、どのような影響が見られるかアンケート調査を実施しました。

導入イメージ

エリア別の調査結果


-1- 保健室(中央エリア・ベッドエリア) 

保健室では、音楽や映像が休息や安心、リラックスできる空間に導く可能性が示されました。

リラックス空間としての機能

中央エリアでは80%、ベッドエリアにおいては100%の生徒が「リラックスできた」と回答しました。(「そう思う」「ややそう思う」の合計)
音楽や映像が環境的負荷にならず、ポジティブな効果をもたらす可能性があることが示唆されています。

コミュニケーションへの影響

中央エリアでは90%が「コミュニケーションが取りやすかった」と回答しました。
生徒の相談の場でもある保健室において、BGMは会話の妨げにならず導入できると考えられます。

受容性

中央エリアにおいては、「音楽と映像の両方」を求める回答が60%と多く、次いで「音楽のみ」を求める回答が40%となり、「両方ともいらない」という回答は0%でした。また、ベッドエリアでは、全員が「音楽はあった方がいい」と回答しました。

求められるコンテンツの傾向

中央エリアでは認知度の高い楽曲(J-POP・洋楽など)やキャラクターの癒し系映像などが好まれ、ベッドエリアでは休息に適したオルゴール楽曲への要望が集中していました。会話や睡眠を妨げない音楽や、自然な眠気を誘う穏やかな音量設計が求められると考えられます。

-2- 職員室

職員室では、業務内容や座席位置によって感じ方が異なり、賛否両論の意見が寄せられました。

快適性と業務環境への影響

53.5%の教職員が快適さを実感する結果となりました。一方で、生徒の情報共有や議論といった職員室特有の業務においては、BGMが適さないケースがあることも示されています。しかしながら、過半数が肯定的な反応を示していることから、例えば朝の打ち合わせ前や昼休みなど、運用時間を限定した「リフレッシュ目的」での活用には可能性があると考えられます。

コミュニケーションへの影響

49.3%と約半数の教職員が「コミュニケーションが取りやすかった」と回答しています。BGMが対話を促進する一助となる一方で、会話や電話対応への影響を懸念する回答も寄せられました。この結果から、業務内容に応じた音量設定やコンテンツの最適化が求められると考えられます。

受容性

「音楽はあった方がいい」と回答した層は約半数となりました。スピーカーに近い席では音量に対する指摘が寄せられた一方で、「BGMがあった方が集中できる」「肩肘を張らない感じがして良い」といった肯定的な意見も複数上がったことから、エリアを限定したBGMの活用やスピーカー配置の工夫などを行うことで、多くの教職員にとってより心地よい空間へ導くことが期待されます。

-3- 事務室

事務室では、音楽は職員が働きやすい空間づくりのみならず、来訪者が入室しやすい雰囲気づくりにも寄与する可能性がうかがえる結果となりました。

快適性と業務環境への影響

83.4%の職員が「快適に過ごせた」と回答しました。具体的には「心にゆとりが持てる」「根を詰めて仕事をする時にリラックスできる」といった肯定的な意見が多く寄せられ、音楽が職員のストレス緩和や業務環境の向上の一助となったと推察されます。

コミュニケーションへの影響

「コミュニケーションが取りやすかった」と回答した職員は83.3%にのぼりました。業務上の会話や情報伝達の妨げにならず、BGMを活用できる可能性が示されています。

受容性

回答者全員が「音楽はあった方がいい」と回答しました。事務室は来訪者の多い場所という特性から、「入りやすい雰囲気づくり」に役立っていると評価する回答が多数寄せられました。

今回の調査を通じ、音楽と映像を用いた空間演出が、校内の快適性を高め、より良い教育環境の構築に寄与する可能性が示唆されました。音楽や映像がリラックスや快適性の向上、コミュニケーションの活性化を後押しすることが期待されます。

<調査協力:立命館守山中学校・高等学校>

保健室は、けがや病気の手当てをするだけの場所ではありません。生徒が話をするため、気持ちを整えるために訪れ、久しぶりに登校した日にはまず立ち寄る場所にもなっています。
今回の導入では、静かすぎない穏やかな音楽が、生徒の緊張をほどき、思いを口にするきっかけになっていると感じました。生徒が座って話せる中央エリアでは身近な音楽が、カーテンで仕切られたベッドエリアではオルゴールの曲が好まれ、保健室には「人とつながるための音」と「ひとりで休むための音」の両方が求められていることが分かります。音に敏感な生徒もいるなかで、その日の様子に合わせて音量を変えたり止めたりと、こちらで調節できる点も大きな利点です。

学校では、生徒を支える教職員のウェルビーイングも欠かせません。事務室で8割以上の職員が「快適に過ごせた」と答えたことは、働く環境を見直すヒントになる結果でした。職員室でも、運用を工夫すれば、教職員が一息つける環境づくりにつながると考えます。
学校の音環境は、これまで十分に語られてこなかった視点です。音楽や映像は、生徒と教職員のウェルビーイングを支える環境資源として、学校の中でも十分に活用できるといえるでしょう。

立命館守山中学校・高等学校 養護教諭 山村和恵  

立命館大学大学院人間科学研究科博士課程後期課程在籍。思春期保健相談士。保育園から高等学校までの現場を経験し、「デジタル保健室」や包括的性教育の実践を牽引。「とりあえずほけんしつ」代表。CAREFILプロジェクトメンバー。著書『デジタル保健室――学校からひろがるケアリングムーブメント』(紫洲書院、2026年)、寄稿に『子ども・若者ケアラーの社会学』など。

キーワード:教育施設・学校・BGM・音環境・映像・リラックス・コミュニケーション

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