コラム
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英語を聞き取れる耳を作るには”

公開日:2019年9月30日

英語を聞き取れる耳を作るには

埼玉医科大学短期大学
和合治久名誉教授



モーツァルトの音楽を活用すると英語が聞き取りやすくなる

人間はどの民族であっても、生まれたときにはあらゆる言語の音を聞き取れる耳をもっています。
例えば、日本人でも英語を母国語とする国で誕生し、幼児から英語を話す環境の中で育てば、英語を聞き取り話せるようになります。では、なぜ日本語を母語とする幼児では、英語を聞き取る力が低下するのでしょう。


実は、さまざまな言語には、主に使用される音域(パスバンド)があり、英語の音域は約2000ヘルツから1万2000ヘルツと高いのに対して、日本語は約125ヘルツから1500ヘルツと低い音域になっています。グランドピアノの一番高い音が大体4180ヘルツなので、英語の音域は高めだということがわかるでしょう。これが、日本人の英語の聞き取り能力の低さの原因になっています。つまり、低い音域の日本語に慣れた幼児は、聞き取りが日本語に特化するため、次第に英語の高い音域を聞き取れなくなり、英語特有の音やリズム、イントネーション、アクセントなどをキャッチしにくくなるのです。


モーツァルトの音楽には、音の特性として約4000ヘルツ以上の高い周波数の音とゆらぎ(風のそよぎや川のせせらぎに近い音)、そして和音が豊富で音同士が生み出す倍音という現象も多く存在しています。こうした特性をもつモーツァルト曲に聴き入ると、脳機能が活性化され、創造力を育成し会話におけるヒアリングや会話力を高めることができると言われています。すべての人間は、母親のお腹の羊水の中で育って生まれてきますが、内耳が完成する妊娠5ケ月後の胎児の場合、羊水でも伝導する約8000ヘルツ以上の高周波音を骨導音として聞いています。したがって、高周波数の音に富むモーツァルトの音楽は胎児の耳にも届いて英語の聞き取り能力を向上させ、脳の聴覚機能を高める上で意味があります。(胎教にも活用される理由がそこにあります)


上述のように、子どもの耳が生後1年以内の幼児のときに母国語に適応すると、日本語の音域以外にある英語は聞き取りにくくなります。しかし、聴覚という五感の一つは、有難いことに、訓練によって初期化することができ、外国語を聞き取る力が向上するのです。さらに、生後においてもモーツァルトの音楽をバックに英語を聞くことは、高周波音を聞き取れる耳の機能を高めて聴覚の再構築を起こし、英語が聞き取りやすくなる耳を育てるのに有効だと考えられています。

和合 治久教授

和合 治久(わごう はるひさ)

埼玉医科大学短期大学名誉教授。
東京農工大学大学院修士課程修了後、京都大学で理学博士取得。
免疫音楽医療学などが専門。
「モーツァルト音楽療法で未病克服力をつける」や「音楽療法元年」など、音楽療法に関する著書多数。

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