Column コラム

公開日: 2021.06.30
更新日: 2021.06.30
「音の効果」を用いた空間デザイン提案
BGMが人に与える影響をふまえて空間をデザインすることでより快適な街づくりをご提案します。
「音」には色々な力があり、人に与える影響は様々です。
USENではこれまでの研究に基づいて「音の効果」を取り入れた空間デザインによって、より快適に過ごせる空間づくりが可能になると考えています。
「オフィス」に最適な音の効果
オフィスでは、一日の活動に合わせて時間帯によってBGMを変えることで、より快適な空間をつくることができるのではないかと考えられます。オフィスの1日の流れと共に、BGMの効果を見ていきましょう。
まず、朝からBGMを流すことによって1日のリズムが生まれ、残業時間削減につながることが期待されるとともに、出社時にある、通勤疲れにも癒しをもたらすと考えられます。次に、どうしても眠気を催しがちな昼食後には、ボサノヴァなど、快活なリズムを持ったBGMを流すことで眠気の抑制が望めます。そして疲れを感じる夕方には、高い音域や心地よい和音で副交感神経を優位にし、集中力アップを期待することができるBGMがおすすめです。
最後に終業時間にはオフィスワーカーが気持ちよく退社できるよう、「帰宅を促す音楽」をご用意しています。
また、オフィスには欠かせない電話の保留音についても実験を行いました。USENの電話保留音を使用したとき、コール中の体感待ち時間を短くし、企業イメージが良くなるという結果が得られました。
「クリニック」に最適な音の効果
クリニックでは、そこを訪れる患者様の年齢層や性別によってBGMを変えることも重要だと考えられます。
まず、高齢者の方が多く訪れるクリニックではアコースティック楽器で癒しをもたらすような、ヒーリング性の高い音楽がおすすめです。
このような音楽は現代の高齢者で問題になっている認知症、誤嚥性肺炎、免疫力低下、冷え性、便秘症などが改善に寄与すると考えられ、高齢者の健康寿命の延伸に大いに役立つものと期待されます。USENが実施した実験でも、アコースティック楽器によるヒーリング性の高い番組によって、唾液分泌量の増加や、唾液に含まれる免疫物質の増加など、高齢者の健康に良い影響を与えるような結果が見られました。
他に、軽やかなクラシックは、女性の4人に3人が悩むと言われる冷え性を改善する効果が期待でき、レディースクリニックにおすすめです。
また、クリニックでは院内の清潔感や医師に対する信頼感を患者さんに持ってもらうことも重要です。USENの研究ではその空間にあったBGMを選ぶことで空間が美しく感じたり、居心地よく感じることが示唆されています。実験では、クラシックやギターを主としたアコースティックBGMが特に空間を「リラックスできる」「心地よい」や「安心できる」といった印象を与えており、不安や緊張を感じがちなクリニックではよい効果を得られそうです。さらに、人の第一印象もBGMによって変わり、「安心感」や「親しみ」を感じさせることができるという結果が見られました。
「レストラン」に最適な音の効果
レストランでは、内装やお店の雰囲気に合わせたBGMによって空間の印象を変えることができると考えられます。
USENの研究では、クラシックBGMが「心地よさ」や「高級感」を印象与えたり、モダン・ジャズやナチュラルなR&Bが「心地よさ」とともに「お洒落な」印象を与えています。
一口にレストランといっても、和食か洋食か、や、お店のコンセプトなどによって選ぶべきBGMは異なります。
例えば、和食のレストランで内装も和風、座敷席があるような雰囲気のお店であれば、いくら「高級感」を与えたいと思ってもクラシックBGMが合わない、ということも考えられます。
また、レストランでの音の効果として、BGMのテンポが食事スピードを変化させる、という研究結果もあります。
BGMのテンポが速いとき、食事スピードが速くなるという結果が見られました。ランチなど、お店が混雑する時間には、フュージョンなどアップテンポのBGMを流すとよいかもしれません。
様々なショップに最適な音の効果
ショップフロアについては、快適にお買い物ができる環境づくりのお手伝いとなるような、様々なBGMの効果をご紹介します。
まずはBGMのテンポはお客様の買い物時間や購買金額と関係するという研究結果があります。ショップにおいてテンポの速い音楽を流すことによって、お客様の買い物時間が短くなり、購買金額も上がりました。レストランでも、テンポの速い音楽が食事スピードを速くさせた通り、BGMのテンポは人の行動に影響を与えるということがわかります。
逆にスローテンポなBGMを流した時は、お客様がリラックスして買い物ができる、ということも示唆されており、ピーク時とピーク時以外でBGMのテンポを変えてみると良いかもしれません。
次に、BGMがあるとき、待ち時間が短く感じられることが期待できます。携帯電話ショップの窓口やアパレルショップの試着待ちなど、ショップにも様々な待ち時間が発生しますが、BGMがあるときは体感の待ち時間が短くなる上、苛立ちや不安、疲労など、ネガティブな感情が弱まり、穏やかに待つことができることが示唆されました。
このように音の効果は、空間デザインの一つの要素として様々な可能性を持っています。
それぞれの店舗やオフィスで求められる印象やコンセプトによってBGMを変化させることが、より快適な空間を生み出すでしょう。
キーワード:オフィス・クリニック・飲食・小売・BGMの選び方